2024.1.3 本当の戦国時代の始まり 【百鬼大乱】
百鬼大乱 [ 真保裕一 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
作者の歴史ものといえば、「天魔ゆく空」などいくつかある。そのほか、浅田次郎などの作品でも歴史を舞台にした作品が多数ある。そんな中で、作者が選んだのは応仁の乱の前に起きた上杉家と鎌倉公方の戦いだ。正直、このあたりの歴史的な事実についてはまったく知らなかった。上杉といえば、戦国時代の越後の上杉謙信なので、関東の上杉というのは印象にない。
それが江戸城を作り上げた太田道灌というすさまじいひとりの武将によりドラマチックな物語となっている。戦いの連続の中で、部下たちを養うためや自分の地位を確保するために謀反を起こす。作者のあとがきにあるように、確かに登場人物たちの名前が似通っているのでスムーズに入り込むのに時間がかかったのは確かだ。
■ストーリー
暗殺と裏切りの三十年を駆け抜けた「名将 太田道灌」東国の諸葛孔明と呼ぶにふさわしき漢【おとこ】ここにあり!応仁の乱に先駆けること十三年、鎌倉公方が関東管領を殺害。血みどろの戦国時代が幕を開ける将軍への野心を抱く鎌倉公方。ついに足利義教の討伐を受け、断絶。乱れた関東を治めるため新たな公方が選ばれるも、管領上杉家と軋轢が続く。
意地と誇りがぶつかり合い、関東を二分する戦いとなる。命がけで公方を守る簗田持助。上杉を支える太田道灌。両者の才知をつくした戦いを活写する歴史巨編。知られざる関東の戦国が今、明らかになる。
■感想
戦国時代の戦いについては有名なので小説化されている。本作は応仁の乱よりもさらに前に、本当の意味での戦国時代をスタートさせた出来事が描かれている。実は知られざる戦いらしい。登場してくる武将もほとんど馴染みがない。
足利尊氏が室町幕府を立てた後に、足利家とは別に、鎌倉公方と関東の上杉家との戦いが描かれている。その時代では京都がメインなのだが、江戸城を建てた太田道灌をメインとして関東での戦いが描かれている。上杉といえば越後のイメージなので関東と言われてもピンとこなかった。
江の島の戦いだとか、関東が戦いの舞台なので、関東近辺での戦いとなる。正直、このあたりの領土の関係や上杉だとか鎌倉公方というのはほとんど知識がない。それでも読んでいくうちに、どのような関係性かがだんだんとわかってくる。
上杉家と鎌倉公方が長い闘いの中でお互いが疲弊していく。そんな中で卓越した能力をもつ道灌の存在が上杉家を有利に進めるのだが…。上杉家内部で謀反が起きる。この機会を鎌倉公方は逃さず戦いはエスカレートしていくのだが…。それでも決着はつかない。
道灌がどれだけ素晴らしい武将であっても、その君主がダメであればどうにもならない。道灌は能力がすさまじく、上杉家内部で力を持ちすぎたことが、狙われる原因となる。主君からの呼び出しには従わざるお得ない。
それまで、上杉家では内部からの謀反に苦しんできたことから、早めに謀反の芽を摘むということで道灌は目をつけられてしまう。道灌は自分の命が危ないと気づいていながら、あえてその場に向かったのだろう。能力のある武将が天下をとるわけではない。戦国時代であれば、また変わっていたのだろう。
知られざる戦いの歴史だ。
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