黒石(ヘイシ) 新宿鮫12 


 2023.11.25     新宿鮫シリーズの中休み的作品だ 【黒石(ヘイシ) 新宿鮫12】

                     
黒石 新宿鮫12 [ 大沢在昌 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
新宿鮫シリーズ。それまでのシリーズを読んでいないと辛い。在日中国人の2世や3世で構成されたグループ金石について、前回から引き続き描かれている。前作で複数の組織や公安との駆け引きが描かれていたが、今回は金石のみとなっている。前作を読んでいないと流れがつかめないだろう。金石の中でリーダー的な役割の八人を八石と呼び、その中のひとりが金石を変えようとする。

裏では殺し屋の黒石が暗躍する。この黒石が本作のメインだ。冷酷で凶悪。どこかサイコパスな雰囲気があり、特殊な武器スマッシャーを利用し相手の頭をかち割る。ただ、これまでのシリーズと比べると黒石だけのインパクトでは弱い。その他の要素が他シリーズと比べると弱い。

■ストーリー
それはシリーズ最凶最悪の殺人者――。冷酷な〝敵〟認定で次々に出される殺人指令を受け、戦慄の手段で殺人を続ける〝黒石〟。どこまでも不気味な謎の相手に、新宿署・鮫島刑事が必死の捜査で挑む!

■感想
前作では公安や金石、ヤクザ、北朝鮮工作員が絡む複雑な物語であった。本作はその中で金石にスポットを当てている。謎の組織の全ぼうが明らかとなる。横のつながりで相手の顔をしらないまま仲間として繋がっていた金石。

その中で8人のリーダーが八石と呼ばれ、八石のひとりである徐福が黒石という殺し屋を使って金石を支配しようとする。鮫島は八石のメンバーが黒石に狙われるということで、正体不明の八石と黒石を探すのがメインとなっている。

殺し屋の黒石はサイコパスだ。花崗岩で作られた特殊な自作武器スマッシャーを使い殺害する。徐福からの指示のもと、邪魔者を殺害していく。武器がスマッシャーというだけで、ステレオタイプなサイコパスな感じだ。

金石の内部でのトラブルに鮫島が首を突っ込む形の本作。八石が次々と殺害される中で、金石内部でのトラブルが明らかとなる。鮫島が捜査をしていく中で、鮫島自身が黒石のターゲットとされてしまう。黒石の心理描写が描かれており、異常な心情が表現されている。

他シリーズと比べると事件のインパクトが弱い。金石内部のトラブルであり八石のひとりが、鮫島に助けを求める。殺し屋黒石の脅威が金石内部に蔓延する。黒石を逮捕したら終わりというシンプルな流れであるのは間違いない。

公安やヤクザや他組織が絡まないシンプルな流れなので複雑さはない。その分、重厚さがなく新宿鮫シリーズとしての面白さは少ない。鮫島と新しい上司の関係も良好であり、組織のしがらみもない。珍しく鮫島がスムーズに動きやすくしているのが印象的だ。

シリーズの中休み的位置づけなのだろう。



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