僕のヒコーキ雲 日記1994-1997 


 2022.7.5      当時の恋人も暴露する赤裸々エッセイ 【僕のヒコーキ雲 日記1994-1997】

                     
僕のヒコーキ雲 日記1994ー1997 / 辻仁成
評価:2.5
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■ヒトコト感想
辻仁成の日記風のエッセイ。いくつか作者のエッセイを読んだことがあるが、本作は初期の初期の時代。南果歩と結婚していたことに驚き、映画監督をしていたことにも驚いた。日記なので、その当時の状況がそのままエッセイとして描かれている。友達として付き合っていた南果歩との関係がそのままエッセイに登場してきたり。その後、結婚まで。付き合っている時代の恋人の名前をそのままエッセイにだすというのはかなりチャレンジングだ。

相手が有名人というのもあるのだろうが。そのあたりを気にしないのはロックなのかもしれない。映画監督や子供が生まれたことの困惑なども描かれている。意外なのは、かなり喧嘩早いという部分だ。

■ストーリー
高まる文学への熱、死ぬまでやめられないロック。初の映画監督作品「天使のわけまえ」。電撃結婚と長男の誕生。1994年から97年までの激動の日々の中での戸惑いと信念を日記風に綴ったエッセイ集。

■感想
作家というイメージが強い作者だが、ロックバンドの面もある。ただ、それは過去のことではあるが、本作ではアマチュアバンドとして編集者とバンドを組んだりもした部分が描かれている。本作を読むと、やはりどこか普通ではない雰囲気を感じることができる。

長男が生まれる際の困惑や、このままだとダメになると、妻子を置いてNYへ移住しようとしたり。作家的な偏屈さなのか。映画監督としてもこだわりが強いのか、スタッフと言い合いになり険悪な雰囲気になることもあるということに驚いた。

エッセイの印象では性格はソフトで周りにも気を遣うタイプかと思っていたのだが…。結婚、出産、映画、移住など多種多様な作者の日常を知ることができる作品だ。飲み屋で喧嘩をしたり、実家にまったく寄り付かないなどは、もしかしたらロックの要素が強いのかもしれない。

かと思うと、子供を連れて実家に帰ったりもする。作者が監督した作品は見たことはない。こだわりは強そうなので、それなりにインパクトがある作品なのだろう。本作を読むと見てみたくなるのは確かだ。

江國香織との作品の話も登場してくる。これは「冷静と情熱のあいだ」のことなのだろう。エッセイの中ではいくつか作品のタイトルも登場してくる。その作品を描くのに作者がどれだけ苦労したのかが語られている。

また芥川賞を受賞した「海峡の光」についても、受賞するまでの緊迫感あふれる雰囲気が描かれている。ひたすら仕事に熱中すると、休むことを忘れ体調に影響がでるというのも、作家らしい行動だと感じた。リフレッシュにハワイに行くなんてのは、いかにも芸能人的ではある。

作者の人となりがわかるエッセイ集だ。



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