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　2020.5.15 　　 　　男目線の作品は大きく印象が異なる　【冷静と情熱のあいだ　Blu】

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冷静と情熱のあいだ（Blu）
評価：3
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■ヒトコト感想
イタリアで絵画の修復士として仕事をする順正。10年前に別れた元カノのあおいとの約束を思い出し、当時の約束を思い出す順正。恋愛物語ではあるのだが、メインは順正の現在の複雑な状況だ。現在の彼女との関係や、仕事での問題。実の父親との関係など非常に複雑な状況となっている。

順正は今の彼女と別れることを決断する。イタリアで自分が修復士としての仕事で師匠から嫉妬されていたと知ると、そこからあらゆる面で絶望感が押し寄せる。人はうまくいかないことが多いと昔の恋愛や守られるはずのない過去の約束にすがりたくなるのだろう。もし、現在の順正が仕事も恋愛も順調だったら、あおいとの再会を求めてイタリアに来たりはしないのだろう。

■ストーリー
あのとき交わした、たわいもない約束。10年たった今、君はまだ覚えているだろうか。やりがいのある仕事と大切な人。今の僕はそれなりに幸せに生きているつもりだった。だけど、どうしても忘れられない人、あおいが、心の奥に眠っている。あの日、彼女は、僕の腕の中から永遠に失われてしまったはずなのに―。切ない愛の軌跡を男性の視点から描く、青の物語。

■感想
冷静と情熱のあいだは江國香織作の「ORSS」がある。これは女性目線の物語で、読んでいて突然別れを切り出す下りなど、かなり難しい女性だという印象をもった。本作では、Rossで描かれたあおいではなく、その相手である順正目線での物語となっている。

なぜあおいと順正が別れたのか。順正目線での考えとあおいの目線では異なることがわかる。やはり男はどれだけ女のことを真剣に考えても、相手のことを理解するのは難しいのだろう。どうしても男目線で考えてしまうので、本作の順正の考え方には共感ができた。

映画版を見たことがある。小説版はかなり印象が異なっている。あおいは恋愛に対してアグレッシブで、順正は恋愛に積極的になれない。どちらかというと、順正は仕事や父親との関係に悩んでいる。特に仕事に関しては、修復士の師匠が順正の才能に嫉妬し順正が修復途中の名画を切り裂いたことがわかる。

順正にとっては母親のような存在であった師匠が、実は自分に嫉妬していた。その結果、師匠は最終的に自殺することになる。自分が今まで信じていたことが崩壊すると男はかなり弱ってくる。

父親代わりの祖父が死に、母親代わりの師匠が自殺する。となると失意の順正が頼る先は、恋人しかいない。今の恋人は子供っぽいことから別れることを決断する。となると、残された順正が頼る先は10年前に別れたあおいしかない。あおいが来るわけがないと思いながらも10年前の約束にすがりたくなる気持ちはよくわかる。

それだけ順正が今の人生に絶望していたということだろう。結局のところ、あおいとは再会するのだが、そこからもう一度付き合うことはない。

女と男でここまで作品の流れが異なるのは驚きだ。