十五の夏 下 


 2022.5.13      15歳の少年がソ連をひとり旅する 【十五の夏 下】

                     
十五の夏 下 (幻冬舎文庫) [ 佐藤 優 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
下巻ではソ連に入ってからがメインで語られている。日本にいたころから、ソ連のラジオ局と繋がりがあり、すでにこの時点でソ連に対する興味がかなり強いというのがわかる。ソ連のラジオ放送局に見学に行き、そこで現地の職員を紹介されてたりもする。さらには、日本人でシベリアで強制労働させられていた人とも知り合う。高校1年でありながら、それら大人と普通にソ連についての会話できることはすばらしい。

かなり大人びた高校生だったのだろう。ソ連での旅行で様々な日本人と出会う。下巻はどちらかというと、日本語を話せるロシア人やソ連を旅行している日本人との交流がメインに描かれている。政治的な思想や考え方など普通の高校生ではないことは確かだ。

■ストーリー
ソ連国営国際旅行公社の職員と別れ、ホテルに戻った。窓からボリショイ劇場とクレムリンの赤い星がうっすら見える。寝付けずに数学の問題集を解いていたら、朝8時になっていた――。モスクワを歩き、同じソ連でも別世界の中央アジアへ。帰路のバイカル号では不思議な「授業」が待っていた……。少年を「佐藤優」たらしめた全40日間の旅の記録。

■感想
上巻では様々な国を周り、普通ではできない経験をしてきた作者。下巻では、ソ連に入りそこでの経験が描かれている。日本にいる時点で、ソ連との交流があったというのがわかる。ソ連のラジオ局に手紙を書いたり、ソ連の放送局の日本支社に尋ねていったりもする。

すでに日本にいるときに普通ではないソ連への激しい興味を示していたということだ。シベリアで強制労働させられた人たちと知り合いとなり、ソ連の情報を得たりもする。とんでもなくソ連への好奇心に満ちた高校生だ。

ソ連の旅では今までの東ヨーロッパ旅行とは異なり、日本語を話すツアーコンダクターとの旅がメインとなる。そのため、上巻で描かれたような旅のトラブルはほとんどない。その代わり、ソ連を団体旅行で旅する日本人との交流が描かれている。

そこでの作者は、まさに高校生とはいえ大人との会話にしっかりと入り込んでいる。自分の将来についても、ソ連を旅行している高校教師からアドバイスを受けたりもする。多少のトラブルがあったりもするが、旅先ですばらしい出会いをしていると思わせる流れだ。

夏休みをギリギリまで旅行に使っているので、日本に帰ると次の日には学校が始まり、そこで数学のテストがある。旅行中も数学の問題を解くために四苦八苦している。このあたりでは、高校の勉強について興味が失われているような雰囲気すらある。

旅先で出会った大人から気を付けるように言われたことが、まさにそのまま起こっている。早く自分の興味がある勉強に時間を使いたいという思いが強く伝わってくる。作者とソ連は運命として繋がっていたのだろう。その後の仕事についても、必然だったのかもしれない。

十五歳の高校生が経験するには、すさまじすぎる旅だ。



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