十五の夏 上 


 2022.3.24      15歳の少年の共産主義国ひとり旅 【十五の夏 上】

                     
十五の夏 上 (幻冬舎文庫) [ 佐藤優 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
佐藤優が15歳の時にソ連・東欧を旅行した際の出来事を描いたエッセイとでも言うのだろうか。まず衝撃的なのは15歳で個人旅行で共産主義の国を旅行しようと思うことだ。やはり、どこか普通とは違う中学生だったのだろう。本作では旅行の準備段階として旅行会社の人から様々なアドバイスを受け日本で準備する場面から描かれている。当時としては費用もそうだが、かなりめんどくさいやりとりがあったとわかる。

インターネットがあるわけではないので、宿の予約も手紙で行うなど、今では考えられないほど情報の入手も準備も大変だということがわかる。様々な国でその国の人々の善意を受けて旅を続ける作者。印象的なのは、かなり食欲旺盛だという部分だ

■ストーリー
1975年夏。高校合格のご褒美で僕はソ連・東欧を旅した。費用は48万円、3年間の授業料の10倍もかかる。両親には申し訳ないが好奇心を優先した――。カイロ経由でチェコスロバキアからポーランド、ペンフレンドのフィフィ一家が住むハンガリー、ルーマニアを経て、ソ連入国まで。様々な出会いと友情、爽やかな恋の前編。

■感想
旅行前の準備も大変だ。ポーランドのビザを得る過程で、国内のポーランド大使館でつれない態度をとられたことでくじけそうになる。普通の中学生であれば、くじけるだろう。作者は良い人に巡り合えたというのもある。

利益度外視で親切な旅行会社の女性と出会い、親身に相談にのってくれたのが良かったのだろう。両親にしても、15歳の息子を共産主義国に一人旅させるなんてのは、今でもありえないのだが、当時としてはさらにハードルが高いことだっただろう。両親の英断もすばらしい。

旅が始まってからはペンフレンドのフィフィーとの交流は感動的だ。お互いが拙い英語でコミュニケーションをとりながら、すばらしい経験をしている。ちょっと恋心的なものもありつつ、旅先で現地の人々に助けられる作者。

やはり現地の人々も、資本主義国の15歳の若者が一人旅をしているとなると、自然に興味がわいてくるのだろう。印象的なのは、チケットやキップを買うのに数時間並ぶのが当たり前という描写だ。次の日の列車のキップを買うために前日の半日を潰すなんてのが当たり前らしい。

その国の流儀を知らなくともなんとかなるのだろう。英語が通じない場所での困難や、それなりにトラブルにも遭遇するが、現地の人々の助けにより乗り切っている。こんな経験を15歳の時にしていれば、その後、どんなことにぶち当たろうともへこたれない精神が作られるのだろう。

波乱万丈な旅行の出来事を読まされていると、ページをめくる手を止めることはできない。現地の人々とコミュニケーションをとりながら、共産主義国の実状を肌で感じる。時代的にも貴重な経験なのだろう。

自分では、大人になった今でも絶対にできないことだと思った。



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