2021.4.18 ヤクザに脅されても引かない佐久間 【雪蛍】
雪蛍 / 大沢在昌
評価:3
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■ヒトコト感想
探偵・佐久間公シリーズ。長大な物語だ。セイルオフでの薬物依存者を救う活動と並行して探偵業務を続ける公。今回はセイルオフを逃げ出したホタルを探し出すことと、家出をした資産家の娘を探しだす物語が描かれている。どちらも血のつながりのない兄と妹の関係がカギとなる。やはりこのシリーズは「新宿鮫」に似た部分がある。
佐久間は自分の信念を曲げることをしない。ヤクザに襲われ殺されそうになったとしても調査から手を引くことはない。鮫島と異なり、国家権力の後ろ盾がないので、ヤクザはあっさりと佐久間を始末することができる。佐久間の強烈な執念が真実を解き明かす。ミステリアスな部分と、ハードボイルドの部分が融合した強烈な作品となっている。
■ストーリー
17歳の家出娘を捜して欲しい―更正施設で薬物中毒患者の世話をする佐久間公に、女性実業家からの依頼が舞い込む。住踪人調査を再開した佐久間は、渋谷・六本木・新宿と娘の行方を追う先先でかってのライバル岡江に先を越される。彼女はなぜ追われるのか?大沢ハードボイルドの鮮烈な到達点がここに。
■感想
佐久間は自分が管理するセイルオフから逃げ出したホタルを探し続ける。血のつながらない妹との関係があることから、ホタルの妹に話を聞きに行く。ここで、ホタルの複雑な家庭の事情と思いが語られることになる。
ホタル探しと並行して、家出した少女を探す物語が続く。そこでは同じくヤクザから依頼を受けた岡江が登場してくる。佐久間の命の恩人であり探偵の能力が高い岡江が、殺害され死体となって発見される。このあたりから急激にきな臭い香りが強くなる。誰が岡江を殺したのか、というミステリー色が強くなる。
佐久間は元女優の家の庭で岡江の死体が見つかったことから、その周辺を疑うことになる。ここでヤクザの小松が登場し、佐久間を半殺しにする。もし、新宿鮫シリーズならば主人公が警官なので、たとえヤクザだろうと手をだすことはできない。
佐久間が探偵ということで、暴行を加え、手を引かなければ殺す、という脅しも効果的に響くのだろう。佐久間は強烈に追い込まれながらも調査を止めない。このあたり、佐久間の仕事に対する強烈な執念を感じずにはいられない。巨大な権力をもつ実業家に対しても決して退くことはない。
ラストではすべての謎が解き明かされ、岡江を誰が殺したかも判明する。権力者やヤクザから脅されたとしても決して退かない。ラストの場面では、ヤクザが目の前に迫りナイフを振りかざしたとしても、そこでも決して退かない。沢木という強力なサポートがあるからこそ無事にすんでいるのだが…。
佐久間の仕事に対する強い思いと、シリーズとして、常に危険と隣り合わせなハードボイルド風味が強い作品となっている。これらの主人公の強い思いは新宿鮫シリーズに受け継がれているのだろう。
シリーズとしては終了しているが、佐久間公の活躍を読みたくなった。
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