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 2019.8.17      作家が他の作家の作品の書評を書く 【読むよむ書く】

                     
読むよむ書く 迷い多き君のためのブックガイド [ 重松清 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
重松清が別名義も含め自らの書評をまとめた作品。書評といってもかなりの分量の文章が書かれており、書評の域を超えている。自分がよく知る作者の作品もあれば、まったく知らない作者の作品もある。重松清がどれだけ思い入れがあるかによっても、書評の内容は変わってくる。ある程度カテゴリー分けされており、重松清と同世代の作家の作品ついて語られている部分は非常に興味深い。

自分が好きな作家についても語られており、読んだことのある作品についての書評というのは、重松清がどんな印象をもったのかと興味深く確認することができる。書評の種類にもよるのだが、作品の内容は入りに利用するだけで、ほとんどを作品とは関係のない文章で埋められている場合もある。

■ストーリー
僕たちはいつも、愛読する作家の作品から、人生や世界の肯定のしかたを学んでいる。太宰治からみうらじゅんまで―必読の50冊―シゲマツ教授の課外授業。

■感想
先輩作家の作品について書評する部分は、どうしても作者に対して重松清の遠慮を感じてしまう。五木寛之や伊集院静などの大御所の作品に対して、とやかく言うのは難しいのだろう。自分も有名作品は読んだことがあるので、重松清の書評を興味深く読んだのだが…。

作品の内容よりも、その作品を読んだ当時自分がどうだっただとか、その後、再読してどうだったかだとか、今の若者が読むとどう感じるだとか、主に自分とその周辺のことについて語られている。

印象的なのは、糸井重里の「ほぼ日刊イトイ新聞の本」だろう。自分もそのサイト自体は当時よく見ていたような気がした。糸井重里がインターネットを収益化するということを、はるか昔から考えており、その結果として今があることに驚いた。

この書評自体もかなり昔のものなので、今とはまた違った印象となっている。ただ、当時を思い出しながら、まさかインターネットがここまで大きくなり、そこで稼げるほど大規模になり、既存の紙メディアを駆逐する勢いがあるとは想像もしなかった。

重松清と同世代の作家の作品についての書評は、自分が好きな作家や読んだことのある作品について書かれているので、興味深く読むことができた。同世代の売れっ子作家たち。特に森博嗣は他の作家からどのように思われているのか気になるところだった。

まったく毛色の違う作家からすると、同世代だけに思うところはあるのだろう。森博嗣の「ブラッド・スクーパ」は、重松清の作風からすると、ありえないし、恐らくは書けないだろう。
作家が他の作家の作品の書評を書くというのは、意外にハードルが高そうだ。



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