右岸 下 


 2022.1.28      記憶をなくした九がサーカス団に合流する 【右岸 下】

                     
右岸 下 / 辻 仁成 / 集英社
評価:3
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■ヒトコト感想
上巻では妻と息子とパリで幸せな生活を続けてきた九。ラストで交通事故に遭い、妻を失い九自身も記憶をなくしてしまう。そこから下巻では、記憶を失った九が自分を思い出すことからスタートする。九は地元に帰り記憶がない状態のまま、母親と生活し元恋人や幼馴染と再会したりもする。

ひっそりと引きこもりに近い生活をしていた九は新たな出会いから、自分の超能力を思い出し、そこからサーカス団で素性を隠しながらスーパーカーを空中へ浮かせたりもする。パリでの人生を最後まで引きずっているのは間違いない。ラストでは生き別れとなった九の息子と再会することになる。「左岸」とは雰囲気が異なるのだが、九の人生がどのように変化していくのかが強烈に描かれている。

■ストーリー
移住先のパリで最愛の妻を亡くし、自身も交通事故にあった九は、帰国して母のもとで植物を育てながら暮らすようになる。幼馴染みの茉莉らの支えの甲斐あって快復へと向かう九だったが、その最中に発露した力が、再び世間の好奇の目に晒されることになり…。人生の大きな流れに翻弄されながらも、いつも互いのことを思い続ける男女の半生を、壮大なスケールで描き出した大河小説。

■感想
九は記憶をなくし抜け殻のような状態で過ごしていた。読者としては、上巻での九のイメージからまるで幼児に返ったような雰囲気の九に戸惑いを感じてしまう。そこから、九が次第に記憶を取り戻していく。その過程で昔の恋人と再会したりもする。

幼馴染の茉莉と、再びくっつくということはない。新しい出会いと、九の超能力が本作のメインなのだろう。過去に一大ブームを巻き起こした九の超能力が、ここへきて再び注目を浴びかける。ジリ貧のサーカス団を救うために九が超能力を使う。

素性を隠し九の超能力をサーカス団のメインのショーとする。スーパーカーに観客を乗せて空中に浮かせる。九の超能力とは気づかずに手品ショーとして話題になる。そこから、九がサーカス団の団長として日本全国を周ることになる。

ここで九は新たなパートナーを迎え、幸せな日常を過ごすのかと思いきや…。九は自分の超能力に異変が起きていることに気づく。一度、超能力に失敗すると、その後はどのようにしてスポーツカーを浮かせていたのかがわからなくなったりもする。

「左岸」との関連が強くなるかと思いきや、九の一生がそのまま描かれている。九は生き別れとなった息子と再会する。そして、ひっそりと暮そうとする。最後まで茉莉との何かあるわけではない。強烈なインパクトはないのだが、九の人生がそのまま描かれていることには強烈なインパクトがある。

自分の後継者である幼い超能力者が現れると、その時、九自身には自分の存在感が脅かされることになるのだろうか。それなりに強烈なインパクトがあるのは間違いない。

左岸とのつながりはそこまで強くない。



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