右岸 上 


 2022.1.11      超能力者・九の複雑な家庭環境 【右岸 上】

                     
右岸(上) [ 辻仁成 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
「左岸」と対になる物語。左岸の主人公である茉莉と右岸の主人公である九の交流が描かれている。左岸では見えなかった九の真実が明らかとなる。少年九が幼馴染の惣一郎と出会い、惣一郎の死から変わっていく。九は謎の超能力を得るのだが、少年時代に騒ぎになりTVなども絡むなど痛い目をみることになる。九の特殊な人生が描かれているのだが、ポイントポイントで九の超能力がよい方に描かれている。

超能力でチンピラたちを撃退したり。。九は茉莉という初恋の相手との失恋からフランスで新たな出会いをする。上巻ではこのフランスでの恋人との生活までが描かれている。下巻では茉莉との関係がまた描かれるのだろうか。九の超能力の行く末も気になるところだ。

■ストーリー
1960年、福岡。九はやくざ者の父とその愛人の子として生まれる。祖父母に預けられた彼は、隣に引っ越してきた同い年の茉莉とその兄、惣一郎と共に育つ。奔放で天真爛漫な茉莉に想いを寄せ、聡明で男気のある惣一郎を実の兄のように慕う九。しかし、突如会得した不思議な力と、惣一郎の死が運命を大きく変えてゆく。生涯にわたる愛をテーマに、江國香織との共作に挑んだ一大長編。

■感想
序盤では九の複雑な家庭環境が描かれている。ヤクザとその愛人の子どもである九。父親が死に母親は父親の知り合いと再婚する。九は幼馴染の茉莉とその兄である惣一郎と交流をもつのだが…。惣一郎の突然の死が九に大きな影響を与えたことは間違いないだろう。

初恋の相手である茉莉に対する九の激しいアピールは、もしかしたら九は発達障害の気があるのでは?と思ってしまう流れだ。思い込んだらいちずということなのだろう。茉莉への告白で成功したかと思いきや、それは茉莉が自暴自棄だったからだ。このあたりが左岸とリンクしている。

本作は左岸を読んでいなくとも十分楽しめる。九の人生は特殊だ。超能力に目覚め、TVから取材がくるようになる。いざ、TVの生放送でスプーン曲げをしようとすると、うまくいかない。そのことから、一時期九はインチキ呼ばわりされてしまう。

九の複雑な人生は日本だけにとどまらずフランスへと場面は移動していく。このあたりは、作者がフランス在住というのがあるのだろう。茉莉と別れ、フランスで新たな出会いがある。強烈なインパクトはないのだが、フランスで九が幸せの方向に進んでいるのが良い。

フランスで彼女ができる九。チンピラとトラブルになった際には、九は超能力を使いチンピラを追い出している。九は周りには合気道と言い訳しているのが良い。ハーフの美しい女性と付き合うことになったとしても、九の心の中ではどこかで茉莉のことを忘れられずにいるのだろう。

下巻では茉莉と九の関係がどうなるのだろうか。九の超能力がどのように変化していくのか。左岸の物語とどこまでリンクしていくかも気になるところだ。

九の超能力は強烈なインパクトがある。



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