調毒師を捜せ アルバイト探偵 


 2018.5.21      1年後に効く毒 【調毒師を捜せ アルバイト探偵】

                     
調毒師を捜せ アルバイト探偵 (講談社文庫) [ 大沢在昌 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
アルバイト探偵シリーズ第2段。父親の涼介の探偵をアルバイト程度で手伝う隆。そこで様々な事件に巻き込まれる。表題作は「調毒師を捜せ」であるが、これが強烈なインパクトがある。殺し屋であるタスクが調合した毒は、何時間後でも指定して相手を毒殺することができる。その期間は12時間や1年など、自由自在。

まさに強烈な調毒スキルだが、それを盗み出そうとする存在がある。その仕事を涼介に依頼し、仕事をまっとうするために毒を仕込む。涼介自身が助かるためにも、タスクから解毒剤を奪い取ろうとする。隆がどうにかして機転を利かせて、それなりにインパクトのある流れとなる。アルバイト探偵は相変わらず、「IWGP」的な流れとなっている。

■ストーリー
冴木隆の父親・涼介は、女に弱く、頼りがいゼロの私立探偵。そんな涼介に、モンローばりのグラマー美女ジョーンから来日中の必殺調毒師タスクを捜して欲しいとの依頼があった。ところが何を血迷ったのか、ジョーンは涼介にタスク特製の48時間後に効く毒をみまってくれた!!中和できるのはタスクが持っている解毒剤だけ。絶体絶命、どうする隆…。ドタバタ親子が繰り広げる、笑いとスリルいっぱいの探偵物語。

■感想
アルバイト探偵シリーズ第2段。いつもの隆がそれなりに動き出している。涼介は頼りがいがない探偵ではあるが、隆はアルバイトとして探偵をしている。ナンパで狙っている女の子を手に入れようと躍起になる。そして、バブルの雰囲気が全体に満ちている。

仕事としての特殊な能力があるわけでもない。隆はボクシングをかじっていたので、それなりに格闘はできる。さらには本シリーズの肝でもある隆の出自が明らかとなる。それまで隆は、涼介の息子と考えていたはずが、それが実は違っていたということでのインパクトがある。

「アルバイト行商人」で、隆の出自についての秘密が語られている。涼介が国の特殊な仕事についていたことは前作で知られていた。それが本作では、とうとう隆自身にも、自分の親の話が伝わってしまう。

ここで普通なら、なんらかの親子の確執なり、隆がショックを受けたりするのだが、本作ではそれらはまったくない。裏の世界の話が大きくなり、きな臭い雰囲気が強くなっている。アルバイト探偵ということで、まだ父親の補助レベルで、隆の成長が物語のカギとなっているのは間違いない。

表題作でもある「調毒師を捜せ」は強烈だ。まず指定した時間にきっちりと毒殺してしまうプロの調毒師タスクの存在。そして、その先にあるのは、タスクから解毒剤を奪うために、涼介自身がタスクの毒にやられるという部分だ。

ここでは父親が毒に冒されているため、息子である隆が知り合いの女性を使い、タスクと交渉しながら事件を解決している。依頼者である美女ジョーンが曲者であるのだが、そのジョーンが最後には痛い目をみるという、因果応報の流れというのは、読んでいて気分が良い。

シリーズとしての面白さが凝縮されている。



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