2009.12.21 先が気になるワクワク感 【電子の星-池袋ウェストゲートパーク4】
■ヒトコト感想
あいかわらずの切れ味の鋭さ。そろそろネタ切れかと思いきや、まだまだ違ったパターンの作品を提供してくれている。この文体にも慣れたこともあり、スラスラと読め、スピード感は増している。アングラ系の話や上野のギャングの話など、多種多様だ。特に「電子の星」では、謎のDVDを見る瞬間の強烈な引き込み。これからどうなるのかというワクワクした気持ちが抑えきれず、一気に最後まで読み終えてしまった。後から良く考えると、不自然な部分や気になるところはあるが、読んでいる間はそんなことを考える余裕はない。マコトがだんだんと知的になっているのも、本作の魅力の一つかもしれない。なんてことないタカシとの掛け合いが無性に面白い。
■ストーリー
アングラDVDの人体損壊映像と池袋の秘密クラブの関係は?マコトはネットおたくと失踪した親友の行方を追うが…。通り魔にギャングの息子を殺されたジャズタクシー運転手に告知された悲惨な真実とは?
■感想
巻を重ねるごとに、マコトが成長している。最初は違和感をもった文体にも慣れ、成長したマコトの会話をすんなりと楽しめるようになった。ニヤリとさせるような自虐的な会話や、考え方。マコトが行う無償のなんでも屋にそぐわないような、変な力を感じてしまった。もちろん、マコトだけでなくタカシに対しても人間的魅力がより高まったような気がした。事件の締めくくりにはかならずといっていいほど登場するGボーイズとタカシ。かなり都合の良い扱いだが、どこかクールなヒーローっぽくて良い。マコトが窮地に陥るとかならず助けにくるのがタカシだからだ。
本作では断然「電子の星」のインパクトが強い。頭の中で想像する映像的なインパクトもそうだが、そこに至るまでのミステリアスな雰囲気。アングラな映像となると興味を惹かれずにはいられない。結末はいつものとおり、かなり強引だが、マコトたちに一番都合の良い終わり方になっているのは定番だ。さらには、作中に登場するある人物の「東京に住んでいるだけで勝ち組だ」という言葉にも、なんとなく、衝撃を受けながらうなずける想いだった。油断していると作中の登場人物たちは、物事の確信をつく言葉をサラリと言ってのけるのはすばらしい。
ミステリー的要素は、昔に比べると減ったかもしれない。しかし、そんなことはどうでもよく、いつものキャラクターたちが縦横無尽に暴れまわるのが読めればそれで十分だ。シリーズものらしく、多少のマンネリは感じさせるが、それでも新しさを追い求めているのはすばらしいことだ。まだまだシリーズとして続く本作。長編にはない、シンプルでサラリとした読み口はすばらしく、スピード感がある。できるならば、このままのスピード感を維持しつつ、新しいことに挑戦してもらいたいものだ。
シリーズ化のメリットを最大限に生かした作品だ。
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