血か、死か、無か? 


 2018.7.22      エネルギー効率的に戦争はムダ 【血か、死か、無か?】

                     
血か、死か、無か? Is It Blood, Death or Null? [ 森 博嗣 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
ウォーカロンシリーズ。人工知能の在り方について描いている本作。人工知能が進化した場合に人間に攻撃を加えることがあるのか。人工知能が自分の生存だけを考えた場合に、人間を排除する結論に達するのか?興味深いのは人工知能は自分を動かすためのエネルギーの確保に力を注ぐらしい。戦争などの争いを行うことはエネルギー的に不効率なので行わない。ただ、人工知能同士での勢力争いはやるらしい。

なんだか究極の形を問われているようで恐ろしくなる。人間が及ばない範囲まで人工知能が考えつくすと、どのような結論へと至るのか。重要なのはネットワークがつながることと、エネルギーが尽きないこと。全世界的なエネルギー消費とネットワーク負荷を考え、どこかでエネルギーが隠れて使われていると判断するのは面白い。

■ストーリー
イマン。「人間を殺した最初の人工知能」と呼ばれる軍事用AI。電子空間でデボラらの対立勢力と通信の形跡があったイマンの解析に協力するため、ハギリはエジプトに赴く。だが遺跡の地下深くに設置されたイマンには、外部との通信手段はなかった。一方、蘇生に成功したナクチュの冷凍遺体が行方不明に。意識が戻らない「彼」を誘拐する理由とは。知性が抽出する輪環の物語。

■感想
このシリーズは世界の遠くない未来を描いているようで恐ろしくなる。人間を殺した最初の人工知能であるイマン。当たり前に人工知能が独自に学び進化していくと、人間が及ばないような思考をするのだろう。エネルギー効率的に戦争は無駄なので、人工知能ならば絶対に戦争はしない。

人工知能が世界のために人間をいらないと判断する可能性すらある。となると、人間の代わりはウォーカロンが担うことになる。本作を読んでいると、人工知能が恐ろしくなる。

作中では発想に関してはまだ人間に部があるという流れだ。ハギリ博士は頻繁に人工知能と会話をするが、そこでのやりとりは強烈だ。すべてを演算で判断する人工知能。可能性をパーセンテージで示されると、全てが人工知能に牛耳られているような気持になる。

マガタシキも登場し、人工知能を絡めた事件も起こる。すべては人工知能が何らかの目的のために判断したのか、それともマガタシキ博士の策略なのだろうか。冷凍保存された人間を奪いとったりと、その目的がはっきりしないのが恐ろしい。

非常に興味深いのは、世界の人工知能同士で覇権争いのようなことが起きるということだ。それは結局のところエネルギーの奪い合いらしい。人工知能はシャットダウンされることを恐れ、いずれは目の前の人間が自分をシャットダウンするという結論に行き着くと、そのはるか前に人間を排除しようとする。

となると、人工知能の行動は自分たちを守るという意味ではすべてが正しいことのように思えてしまう。まさにターミネーターの世界が現実になるような気がした。

このシリーズは良い人工知能と悪い人工知能の線引きが曖昧なので、より恐ろしく感じるのだろう。



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