旅のつばくろ 


 2021.10.23      作者の旅のスタンスがよくわかる 【旅のつばくろ】

                     
旅のつばくろ [ 沢木耕太郎 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
「深夜特急」の作者である沢木耕太郎が描く、旅に関するエッセイ集。世界を旅してきた作者が感じたことをエッセイとしている。自由気ままに旅する。仕事のスタンスとして講演会など先の予定は極力入れないようにしているらしい。それはなぜかと言うと、先の仕事の予定が決まっていると自由にフラりと旅に行けないかららしい。

このあたり、普通の人の感覚ではフリーランスの物書きとして、先まで仕事の依頼が埋まっていれば収入について安心できると思うのだが…。作中に登場したライフワークとライスワークの部分でも、食べていくために仕事をするライスワークを今までやったことがないらしい。フリーのモノ書きとしてはとんでもなく幸せなことなのだろう。

■ストーリー
旅のバイブル『深夜特急』で世界を縦横無尽に歩いた沢木耕太郎。そのはじめての旅は16歳の時、行き先は東北だった。あの頃のように自由に、気ままに日本を歩いてみたい。この国を、この土地を、ただ歩きたいから歩いてみようか……。JR東日本の新幹線車内誌「トランヴェール」で好評を博した連載が待望の単行本化!

■感想
作者がどのような旅を経験してきたのか。海外を渡り歩いてきたというのは知っていたのだが、若いころから近場や国内を気ままに旅していたのだろう。乗り放題のチケットを使い、できるだけ安い旅費で旅をしようと考える。そして、旅先での出会いあり、ハプニングあり。

作者の書きっぷりは非常に大人なので、落ち着いた雰囲気のエッセイとなっている。仕事に対するスタンスが明確であり、やりたくない仕事はあっさりと断ってしまう。それでいて、人との出会いを大切にし、のちに長い付き合いとして続いたりもする。

作者が若いころにインタビューした人との思い出が語られるエッセイもある。若いころの作者は、年齢なりの生意気さがあったようだ。相手がどれだけ大物であろうと、ものおじしない雰囲気はありそうだ。作者のイメージ通り、どこにでもカバンひとつで旅する勢いそのままにインタビューをしているようだ。

井上靖との飲み会など、驚くほどの大物との交流もある。ちょっとした人とも出会いをきっかけとして、そこから様々な展開となる。本作を読むと思わず旅に出たくなるのは間違いない。

深夜特急で有名となった作者。他のエッセイなどで、作者が若いころに厳しくライターとして育てられたというのがよくわかる。そこから、現在まで小説作品なども描きつつ、物書きとして成功しているその秘訣のようなものは見えてこない。

金に執着がないのだが、頻繁にタクシーに乗るなど意外な面もある。旅先では貧乏旅行に慣れていたからと、常に公共の交通機関を使うことを心がけているようだ。それが、国内の移動となると惜しげもなくタクシーを使うらしい。

作者の旅に対するスタンスのようなものが伺い知れるエッセイ集だ。



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