2021.3.24 正体不明のスキマワラシ 【スキマワラシ】
スキマワラシ [ 恩田陸 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
骨董品屋を営む兄弟の物語。モノに触ると過去が見える能力のある弟の散多。簡単に言うとサイコメトリーの能力があり、兄が見つけてきた古いタイルに死んだ両親と思わしき映像が見えることで、そのタイルを兄弟で調べようとする物語だ。平行して廃ビルに現れる少女の霊が物語のポイントとなっている。
座敷童的な少女の幽霊を兄弟はスキマワラシと呼ぶ。都市が再開発されると、古い建物に残る記憶を散多が読んでしまう。サイコメトラーの悪い部分なのかもしれない。過去の映像を元に自分の両親の秘密と、終盤で出会う芸術家の少女との関係が明らかとなる。作者らしい不思議な作品だ。サイコメトラーの能力はすでによく利用されるテーマなため、新しさは感じない。
■ストーリー
白いワンピースに、麦わら帽子。廃ビルに現れる“少女”の都市伝説とは?物に触れると過去が見える、不思議な能力を持つ散多。彼は亡き両親の面影を追って、兄とともに古い「タイル」を探していた。取り壊し予定の建物を訪ねるうち、兄弟はさらなる謎に巻き込まれて―。消えゆく時代と新しい時代のはざまで巻き起こる、懐かしくて新しいエンタテインメント長編。再開発予定の地方都市を舞台にした、ファンタジックミステリー。
■感想
廃ビルに現れる謎の少女の幽霊。スキマワラシの正体を解明するための物語と思いきや…。物語は散多兄弟が謎のタイルを追いかける物語となっている。散多がサイコメトリーの能力があるので、モノにやどる記憶を読むことができる。
すべてのモノから過去が見えるわけではない。問題のタイルはかなり古いものにも関わらず、発色が良い印象的なタイルだ。兄弟が調べたところ、どこかのホテルで使われていたタイルが、ホテルが取り壊されたタイミングでそのタイルだけが別の机などに利用されたと判明する。
兄弟の両親は事故で死んでいる。散多はそのタイルから両親と思わしき過去を見る。このことで、兄弟はよりタイルに対する興味が強くなる。物語は骨董品を集める兄弟と関係者への調査から、次第にタイルのルーツが明らかとなっていく。
ここまででは、スキマワラシについての話がほとんどでてこないのだが、終盤になり急にスキマワラシの展開がすすんでいく。偶然知り合った芸術家の少女と一緒にフェスへと参加する兄弟。その少女は、実は兄弟の両親と関係があったという驚きの事実が明らかとなる。
サイコメトラーの能力がスキマワラシに直接関係することはない。結局のところスキマワラシは何だったのか。よくわからないまま物語は終わっている。スキマワラシがネット全盛の現代でも情報がほとんどないことの奇妙さとそのことに気づいている散多たち兄弟がスキマワラシを分析する。
恩田陸の作品として奇妙さは「ユージニア」のようなタイプを想像していた。割と明るい感じで終わっているのが意外だった。もっと陰鬱で奇妙で恐ろしいまま、その原因がわからない状態で終わるのを期待していた。
スキマワラシの存在は最後まで意味がわからなかった。
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