爽年 


 2018.12.9      特殊な性癖をもつ女たち 【爽年】

                     
爽年 石田衣良/著
評価:2.5
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■ヒトコト感想
娼年シリーズの第三段。娼夫として成長したリョウの姿が描かれている。シリーズのほか作品と比べ、大きな事件はあまり起こらない。基本はリョウが相手をする個性的な性癖をもった女性との情事が描かれている。リョウが女性の欲望を正面からうけとめ、どんなに無理難題を言われようと対応しようとする。その心意気はすばらしいとは思うのだが…。

非合法のクラブを引き継いだリョウは経営的な問題や人間関係的な問題はいっさいない。結末間近に、クラブのメンバーに不幸がおとずれるのだが、それ以外にはただ特殊な性の状況がリョウを通してツラツラと語られているといった感じだ。女性の性の問題につていは、作者の「セキララ人生相談」でも語られているような一貫性がある。

■ストーリー
―始まりはこのバーだった。娼夫として7年もの歳月を過ごしたリョウ。御堂静香の後を引き継ぎ、非合法のボーイズクラブLe ClubPassion(「クラブ・パッション」)の経営を一手に引き受けるまでに。男性恐怖症、アセクシュアル…クラブを訪れる女性たちにも様々な変化が。リョウは女性の欲望を受けとめ続ける毎日の中で、自分自身の未来に思いを巡らせ始めた。性を巡る深遠な旅の結末に、リョウが下した決断とは…。大ヒットシリーズ『娼年』『逝年』続編。

■感想
非合法のボーイズクラブを引き継いだリョウ。そこで男を買う女性たちは、普通ではない性癖をもつ女性もいる。バリバリのキャリアウーマンで容姿も美しい30代の女性が、実は処女だった。リョウに性の喜びを教え込まれるような流れの中で、リョウは処女だということを恥ずかしがることはないと語る。

このあたり、作者の女性に対するメッセージのようにも感じた。登場してくる女性たちは、すべてが特殊な状況にある。それについて、もっとオープンに性を楽しもうというメッセージがあるのだろう。

口の中が性感帯で、それ以外ではまったく感じることができない女性もいる。世の中にそんな女性がいるのか?と疑いたくなるのだが、綿密な取材の上で本作は描かれているのだろう。夫とは年4回程度しかしない。口の中が性感帯だというのもはばかられる。

となると、その性欲を発散させる場は限定されてしまう。リョウは相手がどのような特殊な状況だろうとすべて受け入れ、対応している。たとえ相手が70歳を超えたおばあちゃんだとしても同じスタンスだ。

クラブのメンバーの男が、プライベートのセックスで極度のM気質が災いし事故死してしまう。アメリカの有名人が首を絞めることでエクスタシーを感じ、それが行き過ぎて死亡したというニュースがあった。それの変化版の事故だ。

世の中にはまだまだ世間では知られていない特殊な性癖の女性がいるのだろう。それをあえて小説という形を通して世間にアピールしているように思えて仕方がない。本作を読み、自分の性癖に負い目を感じることなく生活できる女性は増えていくのかもしれない。

本シリーズはこれで終了な気がする。



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