それでも、陽は昇る 


 2021.10.11      どこまでが震災からの復興なのだろう 【それでも、陽は昇る】

                     
それでも、陽は昇る [ 真山仁 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
「そして、星の輝く夜がくる」「海は見えるか」に続く作品。震災復興を目指す地域の人々を描いた短編集。教師・小野寺を中心として物語はすすんでいく。復興五輪などと対外的には大げさに発信しているが、本当の意味で復興されているか、というのが語られている。一見、復興したように見えているが、実は地元民には様々な問題が残されていた。

東日本大震災から10年後の現在でも、復興しきれていない、と考える者たちはいる。どのような状況になっているのか。部外者が知るには本作のような作品を読むしかないのだろう。震災前とまったく同じような生活に戻るのは難しいのはわかっている。すべては受け入れなければならない現実のような気がした。

■ストーリー
自ら阪神・淡路大震災で被災し、妻子を亡くした小野寺徹平。東日本大震災で被災した遠間第一小学校に応援教師として赴任し、二年を過ごした小野寺は、神戸へ戻り、教え子の相原さつきが代表を務めるNPO法人「震災伝承プロジェクト」の活動に奮闘していた。震災で起きたことを語り継ぐ活動を通じ、被災地復興の主役はその土地でこれからの人生を歩む若い世代であるとの思いを強くする。

その一方で、住宅、五輪、ボランティア、産業誘致など、「復興」の掛け声の下、課題を抱えたまま「東日本」から10年の2021年を迎えた。そこに未来へ向かう希望は見いだせるのか。小野寺にとって、「使命」とは何か。彼がたどり着いた、一つの答えとは――。

■感想
小野寺は復興を支援し続け、小学校の応援教師や震災伝承プロジェクト活動に奮闘している。震災で起きたことを語り継ぐのは重要だろう。ともすれば、すぐに人々は忘れてしまう。阪神大震災はもはや過去のものとなり、東日本大震災もそうなりかけている。

新たな災害に目は行くが、災害後の復興がどのような状況かということまで人々の注目はもたない。印象的なのは、地元民のことを考え、巨大なショッピングモールが完成したのだが、地元の商店街は大きな影響を受けていたと言う部分だ。これは復興とは別に、どこでも起き得ることだろう。

復興の住宅に住んでいた者が追い出されてしまう。様々な条件があり、それにあぶれた少数の者はどうしようもなくなってしまう。このあたりは政府や国の政策なので、すべての人々に100%を提供するのは難しいのだろう。必ず誰か不便を被ることがあるのは間違いない。

震災の復興という名が付けば、すべてが許されるわけではない。悪意がなくとも、他者からすると甘えのように見える可能性すらある。もう震災被害を受けた地域は完全に復興しているだろうと勝手に思ってしまっているのは間違いない。

先進的なリーダが先頭にたち地元の漁業を復興させようとする。すべてがうまくいっていたのだが…。そこから組合長を解任させられてしまう。それぞれの言い分はよくわる。組合長は、全組合員の話をすべて聞くことはできない。

震災で被害を受けた地域の中で漁業を復興させるために必死に力を注ぎ続けた組合長にも言い分はあるのだろう。人の話を聞くというのが重要なことはよくわかる。別の短編では傾聴することをボランティアで行い、その結果ボランティアが精神的に不安定になるという流れもある。

震災から復興したと勝手に外部が思っているだけなのだろう。



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