2016.8.15 東北の震災を忘れない 【そして、星の輝く夜がくる】
そして、星の輝く夜がくる [ 真山仁 ]
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■ヒトコト感想
東日本大震災で被災した東北地方の小学校に赴任した教師の物語。作者らしくないというか、重松清の作品のように思えてしまう。自身も阪神大震災の被災者である教師小野寺が、東北の子供たちと本音の交流をする。きれいごとばかりではなく、多少むちゃくちゃなことを言ったりもする。勢いで周りを巻き込むタイプの問題教師だが、校長が理解者のためうまくいっている。
被災者は我慢しすぎだとか、子供は親に本音を言えずに苦しんでいるなど、被災したことによる被災者の我慢がとりあげられている。必ずしも小野寺の意見が正しいわけではない。作中でも小野寺を支持するパターンばかりではない。忘れさられようとする東北のことを思い出すきっかけになる作品だ。
■ストーリー
東日本大震災の爪痕が生々しく残る東北地方の小学校に、神戸から赴任した応援教師・小野寺徹平。かつて阪神・淡路大震災を経験した彼は、心に傷を負った子どもたち、父兄たちとの”本音の交流”を通して、被災地が抱える問題と向き合っていく。
■感想
神戸から赴任した応援教師の小野寺。東日本大震災を経験した小学生たちと、心と心のぶつかり合いをする。今までの作者の作品にはない人情モノというか、人の心を感じる物語だ。買収だ株価だの類は一切でてこない。
作者を知らされずに読んだら、間違いなく重松清の作品と思ってしまうだろう。被災した小学生が親に気を使い、苦労する親を見ていると、子供は自分の思いを抑えるしかない。東北の小学生たちがそのような気持ちでいるなんてことは想像もしなかったが、よく考えればありえることかもしれない。
ボランティアと被災者の関係も描かれている。ボランティアの問題というのは常にでてくる。が、本作ではそれらの問題を受けて改善したボランティアチームが、あまりにガチガチの規則づくめで息苦しくなるという流れだ。ボランティアのリーダーが語ることは正論だ。
そのリーダーが小野寺の神戸時代の教え子というのもポイントなのだろう。何が正しいのか。ボランティアと被災者の関係は非常に難しい。ボランティアが被災者からお礼を貰うわけにはいかないが、被災者側の後ろめたさもある。難しい問題だ。
作中では小野寺が様々な行動をとる。上に歯向かいルールを破るようなアイデアをだす。俗にいう型破りな教師だが、理解者として校長がいることが心強い。ただ、小野寺の行動や言葉がすべて正しいとは思えないし、そのような結論にもなっていない。
何が正しいというのはない。こんな問題が東北で起きている。こんな考え方もあるというのを示しているのが本作だ。東北を忘れないことをテーマとした短編もある。二宮金次郎の銅像を改造して、津波から逃げる銅像にするというのは、少しやりすぎではないだろうか。
今までの作者からはイメージできない作品だ。
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