海は見えるか 真山仁


 2016.10.19      被災地で起こるリアルな問題 【海は見えるか】

                     

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■ヒトコト感想
そして、星の輝く夜がくる」の続編となる短編集。教師小野寺が被災地の現実に直面する。被災地ならではの物語となっている。被災しなければ普通に生活していた少年少女たち。被災によるトラウマや、遺体の洗浄をしていた自衛隊員とメル友になるなど、普通の日常ではない。神戸から応援教師としてやってきた小野寺が、少年少女たちのためを思い活動する。

前作からその印象があったが、まるで重松清作品だ。ただ、教師である小野寺が絶対的に正しいわけではなく、勇み足や余計なお世話をしてしまう。子供たちは大人が思っている以上に逞しく大人なのは間違いない。被災地だからとデリケートな問題に目を背けず、真っ向から立ち向かっている作品だ。

■ストーリー
東日本大震災から一年以上経過しても、復興は遅々として進まず、被災者は厳しい現実に直面し続けている。それでも、阪神・淡路大震災で妻子を失った教師がいる小学校では、明日への希望が芽生えはじめていた―。『そして、星の輝く夜がくる』に連なる、二年目を迎えた被災地、奇蹟の祈り。生き抜く勇気に出会う珠玉の連作短編!

■感想
「便りがないのは…」は、震災で被害を受けた遺体を洗浄する自衛隊員と少女がメル友になるが、自衛隊員から連絡が途絶えたことから物語が始まる。自衛隊員の過酷な仕事。少女とのメル友の件はオマケでしかなく、遺体洗浄という辛い仕事に従事する自衛隊員の現状が描かれている。

非常にショッキングな物語だ。メル友になった少女は、トラウマになる可能性すらある。報道だけでは知れない、裏方として辛い仕事を続ける人がいるということが、改めてよくわかる短編だ。

「白球を追って」は最も印象に残る作品だ。地元の小学生野球チームにエース兄弟がいることで大会に勝ち進める可能性がでてきた。が、兄弟の夢はプロ野球選手。そのためにレベルの高い大阪へ転校することになる…。兄弟が抜ければチームは成り立たない。

町の希望のため、兄弟を説得するのか、それとも兄弟の夢を優先するのか。小野寺は一試合だけでも出てくれと頼むつもりだったのだろう。が、結末は驚きの展開となる。思わず涙がこぼれそうになる。大人が思っているよりも、子供たちは大人だということがよくわかる短編だ。

「海は見えるか」は表題作でもあり、今現在被災地で起きている問題なのだろう。巨大な防潮堤を建設するのか、それとも原風景を守るのか。津波に対する対策としては、超巨大な防潮堤を作るしかない。そのためには、美しい海や海岸の風景を壊すことになる。

町人たちは大きく分裂する。防潮堤建設には地元の土建会社の景気回復にも一役買っている。大っぴらに防潮堤反対を言えない雰囲気もある。何が正しいのかはわからない。ただ、今あるリアルな問題を描いている短編だ。

忘れかけた被災地のことをまた思い出せる作品だ。



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