2021.10.18      武家を守ることの無意味さ 【流人道中記 下】
      
                                 
            
            流人道中記(下) (単行本) [ 浅田 次郎 ]
            評価:3
                                                                        
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            ■ヒトコト感想
            上巻から続く物語。上巻では玄蕃と石川のコミカルな道中が描かれており、ふたりの特殊な立場というのがよくわかる流れとなっている。そこから、父親の敵を探しつづけ7年も仇討のために旅を続ける男と出会う。そして、偶然にも男は仇討の相手を見つけるのだが…。ここで玄蕃と石川が巻き込まれることになるのだが、玄蕃が鮮やかな手並みですべてを丸く収めている。
            
            侍にはどのような意味があるのか。戦がなくなった世界では武家の存在意義とは。後半では玄蕃が犯した罪の真実が明かされることになる。それまでの玄蕃の行動はおちゃらけた場面はあるのだが、基本はしっかりと武士としての芯を通している。そんな男がなぜ切腹を拒否して御家を取り潰しになったのか。衝撃的な後半だ。
            
            ■ストーリー
            「武士が命を懸くるは、戦場ばかりぞ」流人・青山玄蕃と押送人・石川乙次郎は、奥州街道の終点、三厩を目指し歩みを進める。道中行き会うは、父の敵を探し旅する侍、無実の罪を被る少年、病を得て、故郷の水が飲みたいと願う女…。旅路の果てで明らかになる、玄蕃の抱えた罪の真実。武士の鑑である男がなぜ、恥を晒して生きる道を選んだのか。
            
	        ■感想
	        押送人である石川は玄蕃の思いもよらない地位の高さと、その鮮やかな物事を収める手腕に驚き続ける石川。武士としての考え方はしっかりしているが、命を賭けるほどのことはないという考え方の玄蕃。上巻から続く、父親の仇討のために旅を続ける男が偶然にも敵を見つけることになる。
	        
	        ここで玄蕃は立会人として、石川は助っ人として立ち会うことになる。ここで敵は剣の腕がたつということで、油断はできない。助太刀の石川としても行きがかり上、いつの間にか命を賭けて助太刀することになる。
	        
            玄蕃の立会人としての采配がすばらしい。命を賭けて戦うことのむなしさ。どちらもうまくいくような策をひねり出し、すべてを丸く収めている。玄蕃は何かと事情のある人物に出会ったとしても、早い段階で真相に気づいてしまう。
            
            そして、誰もが納得するようなうまい方法を考える。石川が純朴なだけに、出来事を表面上でとらえてしまい混乱しがちである。実直な石川と偏屈な玄蕃。ただ、玄蕃の鮮やかな采配によりすべての人が助かるというのが最高だ。
            
            玄蕃がなぜ罪を犯し切腹を命じられたのか。その真実が玄蕃の口から語られることになる。家をつぶしてまで切腹を拒否した理由は衝撃的だ。家を守ること、メンツを守ることを第一に考える武士。実は玄蕃も石川と同様に生まれた時から武士ではなかった。
            
            武士としての能力が高いだけに、武家を守ることの無意味さに気づくことになる。平和な世界では、武士は不要と考える玄蕃。冤罪でありながら、すべてを受け入れる。そのことを家来と家族すべてに納得させることのすばらしさを感じてしまう。
            
            一風変わった武士の物語だ。
            
            
            
            
            
          
              
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