ロンリネス 


 2018.11.20      不倫にはまるタワマンママ 【ロンリネス】

                     
ロンリネス [ 桐野夏生 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
ハピネス」の続編である本作。タワマンのママ友たちのトラブルを描く。前作ではママ友の不倫にざわつく他のママ友たちという流れだったが、本作では主人公の有紗自身がダブル不倫にはまろうとしている。ママ友たちとの人間関係の難しさや、生活レベルの違い、そして、タワマンのひとつ下に住む家族の旦那から言い寄られる。

様々なトラブルがありながらも、基本は有紗が不倫に否定的でありながら、最後には不倫の波に飲み込まれていく。つい自分の周りのママたちを想像して読んでしまいがちだが…。保育園問題や主婦の不倫など、ありがちなネタかもしれないが、そこにタワマンでの格差などが入り込むと、より事態は複雑になる。

■ストーリー
東京湾岸のタワマンに暮らす岩見有紗は、夫とのトラブルを乗り越えたかに見えたが再びぎくしゃくしている。そんななか、同じマンションに住む高梨と急接近し、ママ友でW不倫中の美雨ママに相談をするうちに、有紗は高梨に強く惹かれていることに気づく――

■感想
タワマンのママ友コミュニティというと、近寄りがたい印象がある。作中でも高い生活レベルが当然のように語られている。そんな中で有紗は共働きでなんとかタワマンに賃貸で住んでいる。まさに見栄の極みというか、有紗の周りでは実質的なことよりも他人からどう見えるかが重要のように考えられている。

となると、旦那とも喧嘩がちになり、ママ友へのうらやましい気持ちが募ることだろう。有紗は一番の親友であるママ友の家庭が不倫により崩壊しているのを目の当たりにしても、自分自身も不倫の泥沼にはまろうとしている。

「ハピネス」の続きであるため、ダブル不倫をし続けたママ友の家庭がどうなったかも語られている。子供はどうなるだとか、相手の家庭は奥さんに離婚してもらえないだとか。一番ショッキングなのは、不倫された奥さんの方は、自分のプライドが許さないので、とことんまで相手を苦しませなければ気が済まないという記述だ。

不倫の代償は高くつくとわかっていながら、誰もが止めることができない。有紗もわかっていながら、不倫にはまり込んでいく。相手の男が女遊びに慣れた手練れだとしても、有紗に責任の一端はあるのだろう。

ママ友の世界というか、タワマンに住む主婦の世界の恐ろしさが、これでもかと描かれている。不倫を軸に有紗の周りのママ友たちのお受験や姑の問題など、問題の本質は昔とは変わっていないが、タワマンが舞台となるとそれだけで少し特殊なような気がした。

家庭を第一に考えるママばかりではない。タワマンママたちの独特な状況は「ハピネス」で描かれているのだが、本作では不倫の泥沼にはまる主婦の日常が赤裸々に描かれている。

作中で驚いたのは、有紗の旦那が休みの日はほぼ一日中飲み続けているという部分だ。



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