狼花 新宿鮫9 


 2019.9.15      キャリア警官の苦悩 【狼花 新宿鮫9】

                     
狼花 新宿鮫9 長編刑事小説 /光文社/大沢在昌
評価:3.5
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■ヒトコト感想
新宿鮫シリーズの第9弾。今回は泥棒市場をめぐる争いが描かれている。シリーズでは鮫島の宿敵としてちょくちょく登場してきた仙田が物語のカギを握る。仙田が作り上げた泥棒市場を乗っ取ろうとするヤクザ組織。そんなヤクザたちを利用して外国人の犯罪者を撲滅しようと考える警察組織。どちらも地位のある者が主導し、ヒリつくような駆け引きを展開している。

鮫島の同期でキャリアである香田はヤクザと取引してでも自らの目的を達成しようとする。ヤクザも警察も命を賭けて目的を達成しようとする。そこに鮫島という遺物が入り込むことで、うまくいくはずの計画にひずみが生じる。最後は物語のキーマンたちが中華料理屋の一室で激しい一戦を繰り広げることになる。

■ストーリー
大麻所持で逮捕されたナイジェリア人の取調べにあたった鮫島は麻薬ルートの捜査に乗り出し盗品を専門に売買する泥棒市場の存在を突き止める。そこで鑑定人として働く中国人美女・明蘭。その背後には鮫島の宿敵・仙田の存在が。鮫島と同期の香田は外国人組織の撲滅のため暴力団と手を組むことを画策していた。泥棒市場の存在を巡って、さまざまな思惑が渦巻く!長編刑事小説。

■感想
ナイジェリア人の大麻所持から始まる物語。鮫島が大麻の出所を探ると、最終的には盗品を扱う泥棒市場に行きつく。ここで泥棒市場側の視点になり、仙田が中国人の女を使い泥棒市場を成長させていく。仙田は泥棒市場を運営するにあたり、ヤクザに対しても引くことはなく市場を牛耳っている。

仙田の泥棒市場を奪おうとするのは、日本最大のヤクザ組織である凌和会だ。ヤクザとカタギである仙田では、仙田の方が部が悪いかと思いきや、仙田は自分の胆力でヤクザたちを手玉にとっている。

泥棒市場が成長すると、そこに食いついてくる者たちがいる。その中のひとつが警察組織だ。鮫島の同期である香田の主導で泥棒一番を凌和会にコントロールさせようとする。そのことにより外国人犯罪者を撲滅しようと香田は考えている。

ヤクザと組むことに嫌悪感を抱く鮫島が独自の動きを見せ、香田の計画をつぶそうとする。香田の執念はすさまじい。そして、香田を心酔する部下たちは、命がけで鮫島を止めようとする。香田の周りの部下たちの信じられないような忠誠心はすさまじい。

仙田は鮫島に追われ姿をくらます。そのすきに泥棒市場を手に入れた凌和会の毛利は香田と組むために動き出す。警察の幹部とヤクザ、さらにはヤクザの中には指名手配されている中国人の女もいる。そんな状態で香田はリスクがあると知りながら毛利と会おうとする。

まさにこの場面が物語のピークだろう。本来なら警察が真っ先に潰さなければならない日本最大のヤクザ組織と警察が手を組む。そんなことが世間に知れたらとんでもないスキャンダルとなる。ラストの流れはすさまじい。

新宿鮫シリーズの中でも、よりキャリアに焦点があてられた作品だ。



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