2015.2.10 ザ・ハードボイルド的キャラ 【新宿鮫】
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■ヒトコト感想
作者の看板シリーズ。元キャリア警察でありながら新宿署防犯課に勤務する鮫島が主人公の本作。人気シリーズだけに相当キャラ立ちしているかと思いきや、そうでもない。警察内部の軋轢や縦横の複雑な関係が面白さの核となっている。どことなく横山秀夫作品に雰囲気は似ている。が、警察内部の争いとは別にハードボイルドとしての魅力もある。
鮫島が誰におもねることなく、自分の信念に沿って行動することが、読者を熱中させる要因のひとつだ。鮫島が独自に動き、ヤクザや同僚、上司に対しても態度を変えない。元キャリア警察官という肩書から、組織内の軋轢を乗り越え、ひたすら犯人逮捕にまい進するその姿がすばらしい。
■ストーリー
ただ独りで音もなく犯罪者に食らいつく―。「新宿鮫」と怖れられる新宿署刑事・鮫島。歌舞伎町を中心に、警官が連続して射殺された。犯人逮捕に躍起になる署員たちをよそに、鮫島は銃密造の天才・木津を執拗に追う。突き止めた工房には、巧妙な罠が鮫島を待ち受けていた!絶体絶命の危機を救うのは…。
■感想
ヤクザたちから恐れられる新宿署の鮫島。元キャリア警察官だが、過去起した問題から警部のまま新宿署に勤務する。まずアウトロー的な鮫島が警察内部で様々な人物から問題視されていることが描かれている。警察内部の権力争いや縦横の繋がりの複雑さはかなり特殊だ。
そんな特殊な組織で一匹狼として行動する鮫島にしびれてしまう。組織から外れた人間でありながら、鮫島を慕う人物もいる。この鮫島のザ・ハードボイルド的キャラが定番的でありながら、安心して楽しむことができる。
鮫島は銃密造の容疑者を追いかける。ちょうど同じ時期に警官殺しの事件が発生する。鮫島の執念の捜査と、あらゆる情報網を駆使した調査で犯人を突き止めるのだが…。警官殺しの事件は単純な事件なのだが、警官殺しの予告犯をつけ加えることで複雑化している。
誰がどうつながっているのか。特殊な密造拳銃とそれが製造されている隠れ家を探すために動き回る鮫島。新宿のオカマバーまで、あらゆるコネを駆使した鮫島の執念の捜査が、事件解決の入り口を開くことになる。
シリーズとして、鮫島以外の周辺キャラたちが良い。特に鑑識の藪がすばらしい。銃密造の天才・木津の特殊な銃の仕組みを見破り、警官殺しの事件について鮫島に的確なアドバイスを送る。
鮫島の恋人である晶や、ライバル関係にある香田など、脇役がキャラ立ちしていることもシリーズとしての魅力なのだろう。強烈なインパクトはないのだが、ジワジワとした魅力がある。特にエリート刑事たちと鮫島の争いというのは、警察内部の軋轢を象徴しているようで良い。
鮫島のキャラだけの作品ではないことは確かだ。
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