人間のように泣いたのか 


 2019.4.24      AIとAIが電子戦争を起こしたら 【人間のように泣いたのか】

                     
人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly? (講談社タイガ) [ 森 博嗣 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
ウォーカロンシリーズ。今回はAI同士の対決という、今までとは一段階上の闘いとなっている。今までは人間対AIという図式があった。人間の想像を超えたAIに対して、人間はどのように対応すべきか。AIに人間は滅ぼされるのではないか?という恐怖感が付きまとう流れだった。それが、本作では序盤から摩訶不思議な展開となる。

クーデターと思われる作戦が実行されるとハギリに連絡がくる。それを身構えていたハギリなのだが…。なぜかハギリたちだけが拘束されてしまう。一体何が起こっているのか。AIの暴走か、それとも…。電子戦争というのは恐ろしい。高度に電子化された社会では、電子を握られると人間はどうにも手を出せないということだ。

■ストーリー
生殖に関する新しい医療技術。キョートで行われる国際会議の席上、ウォーカロン・メーカの連合組織WHITEは、人口増加に資する研究成果を発表しようとしていた。実用化されれば、多くの利権がWHITEにもたらされる。実行委員であるハギリは、発表を阻止するために武力介入が行われるという情報を得るのだが。すべての生命への慈愛に満ちた予言。知性が導く受容の物語。

■感想
研究成果の発表の場で、ある作戦が実行されるとハギリに連絡がくる。それは発表者を拉致するという危険な行為なのだが…。ハギリは自分と関係のない人物が拉致されることに嫌悪感を覚えていたところ、実はそれらはすべてハギリを拘束するためにお膳立てされた情報だった。

ハギリは拘束され、その後情報が一切入らなくなる。ここでハギリはいち早くある考えにたどり着く。今までの本シリーズの流れであれば、人間対AIという図式があった。本作はAI対AIという摩訶不思議な状況となっている。

AI同士の電子戦争。人間は基幹システムであるAIが割り出した計算結果から作戦を実行する。AサイドBサイドと別れたAI同士の電子戦争。そのBサイド側からハギリは危険人物ということで拘束される命令がでる。人間はAIからの命令をただ実行するのみ。

AIは先の先の先まで計算し結果を予測する。ハギリの不確定要素がなければ、どうなっていたのかはわからない。恐ろしいのはAIがどこまで先を予測しているのかわからないということだ。AIがその気になれば、人間では想像できない未来を予測してしまうだろう。

ある意味AIに支配された世界なので、人間では手が出せないということなのだろう。本作ではマガタ博士が登場し、初めてハギリと会話をする。AIがどのような結論を出すのか。ハギリを含めた人間たちには、AI戦争に手出しすることはできない。

恐ろしいのは、自分たちの味方と思っていたAIが、最終的に人間を排除する方向に結論をだしたとしたら、人間は滅びるしかないというところだ。AIを止めるためには電源を切れば良いのだが、それすらもAIに制御されたウォーカロンに守られたら終わりだ。

AI同士の電子戦争なんていうのは、未来にありえそうだ。



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