魔女の盟約 


 2018.12.2      日本全国のヤクザに追われる女 【魔女の盟約】

                     
魔女の盟約 / 大沢 在昌 / 光文社
評価:3
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■ヒトコト感想
魔女の笑窪」の続編。”地獄島”から抜け出した水原が、韓国で出会った白理の復讐を手伝いつつ自分をはめたヤクザへ復讐する物語だ。白は夫と子供を殺された恨みを晴らせ、仇である黄への執念がすさまじい。水原は白と共に日本で中国の安全部や、ヤクザたちを手玉にとり白の復讐を実現させようとする。ラストの利害が絡み合う複雑な状況は秀逸だ。

西の大物ヤクザや不動産業の大物社長。そして、警察公安部まで引き連れ、ホテルのひとつの部屋でみなが一同に会する状況を作り上げる。ひとつのピンチを脱したとしても、その先では水原はやくざを手玉にとるようなことをしたので、永遠にヤクザに命を狙われることになるだろう。

■ストーリー
過去と決別すべく“地獄島”を壊滅させ、釜山に潜伏していた水原は、殺人事件に巻き込まれるが、危ういところを上海から来た女警官・白理に救われる。白は家族を殺した黄に復讐すべく、水原に協力を依頼するが―。日中韓を舞台に、巨大な組織に立ち向かう女性たちを壮大なスケールで描く、『魔女の笑窪』の続編。

■感想
地獄島から脱出した水原は、白の恨みを晴らさせるために日本に戻ってくる。そこでは中国の安全部の手助けを得ながら、白の仇である黄を探すため大物実業家である高岡に近づく。ここで、高岡の息子やキレモノヤクザである東山などとも出会い、黄を探し出そうとする。

水原の駆け引きがすばらしい。時には引退した大物の手助けを借りながら、ヤクザをあべこべに脅そうとしたりもする。ヤクザからしたら水原こそ恐怖の魔女に思えていることだろう。

黄を見つけ出すために高岡の息子を誘拐し、高岡を脅すのだが…。高岡がどれだけ妥協案をだしたとしてもブレることはない。この状況だけ見ると、水原が極悪なヤクザで高岡はヤクザに息子を誘拐され脅されている実業家にしか思えない。

黄を殺すことだけを目的にしているので、高岡としても妥協点が見つけられずにいる。水原自身には何の力もないはずが、中国安全部の利益を考えたくみに誘導し、警察組織はヤクザを壊滅させたいと考えるためそれを利用する。まさに自覚なしに悪魔の所業を行う女だ。

ラストはホテルの一室に一同が集まる。外では警察が手ぐすねを引いている。中国安全部は警察がいることを無視して行動しようとする。逆に水原と敵対するヤクザたちは、警察が外にいる手前、何もすることができない。ヤクザをここまで追い詰める一般人もすさまじい。

高岡の息子であるタカシが生き残り、水原に復讐する流れになるのだろうか。それとも日本中のヤクザに狙われることになった水原に、救世主が現れるのだろうか。続編が楽しみで仕方がない。

水原の行く末が気になるので、続編は必ず読むだろう。



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