2017.4.11 各方面に顔が利く魔女のような女 【魔女の笑窪】
魔女の笑窪 [ 大沢在昌 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
闇のコンサルタントとして各方面へ顔がきく女・水原。男をひと目で見抜くその力は、何千人もの男に奉仕し続けてきた地獄島の経験が生きている。水原の闇のコンサルタントとしての繋がりが物語を面白くしている。ヤクザに対して利用価値があると認められ、殺したい人間がいる場合は、中国人に依頼する。水原の考え方はドライでありストイックだ。
自分の過去を探ろうとする者は、たとえ好意があったとしても容赦なく始末する。さながらプロの殺し屋のようなドライさだ。主人公が女ということで、ハードボイルドの毛色が少し異なるが、主人公が強烈に合理主義でお涙ちょうだいには靡かず、自分に危険がおよぶなら容赦なく切り捨てる。非常に魅力的なキャラクターだ。
■ストーリー
自らの特殊能力―男をひと目で見抜く―を生かし、東京で女ひとり闇のコンサルタントとして、裏社会を生き抜く女性・水原。その能力は、「地獄島」での彼女の壮絶な経験から得たものだった。だが、清算したはずの悪夢「地獄島」の過去が、再び、水原に襲い掛かる。水原の「生きる」ための戦いが始まった。
■感想
闇のコンサルタントとして活躍する水原。誰ひとりとして逃げ出すことができない「地獄島」から逃げおおせた二人のうちのひとり。前半では水原がどのような地獄から抜け出してきたのかはっきりしないまま、その特殊能力で男を見抜きピンチを脱している。
水原は女であり、魅力的な男に体を許すこともある。そして、相手が自分の仕事上での障害になりうるのなら、あっさりと他人に売り、自分から中国人に依頼して始末したりもする。このドライさが強烈に痺れてしまう。
水原の特徴としては、ヤクザ組織に対して顔がきくということだ。ヤクザにも一目置かれ、各方面に顔がきき、裏の仕事も請け負うことができる。まさに大沢在昌が良く描くハードボイルドの女版だろう。ただ、水原は体を武器にし情報を得たりもする。
水原が地獄島から抜け出した女だと知ると、地獄島から水原を連れ戻そうとする追っ手がやってくる。水原の過去と、現在は仕事に成功し様々な勢力に通じていることで、過去との決別をしようとする。女がひとりでドライに活躍するには、過去を捨てるしかない。
このシリーズは水原のキャラが立っているので続編があるようだ。確かに水原が地獄島から抜け出し、追っ手やヤクザ組織を巻き込んでの駆け引きは面白い。水原ひとりの力では、太刀打ちできない場合も、交換条件を提示し、ヤクザ組織の中から協力者を作りだし、巨大な権力と対決する。
気になる男や、恋した相手に対しても、自分の過去を探ることや、自分を危険な立場に追い込む場合はあっさりと中国人を使って殺してしまう。この超ドライな感じが、男が主人公ではだせない雰囲気だろう。
今後水原がどうなっていくのか、続編が楽しみだ。
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