2021.3.4 安住の地を探し求める頂捕 【魔女の封印 下】
魔女の封印 下 (文春文庫) [ 大沢 在昌 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
上巻から引き続き、人の生気を吸い取る頂点捕食者(頂捕)を中心とした物語となる。中国から日本へやってきた頂捕たちとの闘いとなる。水原とヤクザだけでなくNSS、そして外務省と中国の安全部までもが関わってくる。頂捕が何人存在し、日本には堂上以外にもいることが判明する。
頂捕たちは自分たちが安住できる土地を探すために中国から日本に来た。頂捕のグループの鍵を握るのは、日本人の頂捕である森まなみだ。頂捕の男は、人間の男からしか生気を吸うことができない。頂捕の女は人間の女からしか生気を吸えない。唯一、妊娠した森まなみのみ、おなかの中の子供が男の子なので、男女両方から生気を吸いとることができる。各勢力の思惑が交錯する物語だ。
■ストーリー
水原は、自分の存在意義や能力を知らされた中国人の頂点捕食者が、ある目的をもって日本にやってきたと推測する。彼らの参謀は誰か、そして目的とは―。堂上は殺され、水原は中国人頂捕たちの行方を追うが、逆に中国安全部に拉致される。その裏では、国家的な陰謀が蠢いていた。「魔女」シリーズ第3弾。
■感想
相手に触るだけで生気を吸い取り人間を腑抜けにする能力がある頂捕。日本のNSSは特殊な能力をもつ頂捕を捕まえ、なんとか自分たちのコントロール下に置こうとする。中国安全部は、政府の幹部が頂捕により暗殺されたことから、テロ犯として追いかけ続け日本の外務省にまで影響力を示し始める。
ヤクザ組織は、頂捕をガードしていたが頂捕により組員が多数腑抜けにさせられたため、頂捕に対する報復を考えている。それぞれの組織が、自分たちの都合で動きまわり、頂捕のグループは安住の地を探しさまよい続ける。
水原はどの組織にも属さずに独自の動きをする。やはり強烈なのは頂捕の存在だ。水原の目の前で瞬時に相手から生気を吸い取る。それを目の当たりにすると人間は頂捕に対して恐怖心しかもたないだろう。頂捕は安心して暮らせる場所を探しているだけというが、非捕食者である人間からすると捕食者が身近にいることに対して許さることではないのだろう。
頂捕との子供を妊娠したことで、おなかの中に男の子がいる状態の森まなみは、男からでも女からでも生気を吸い取れる無敵の存在となる。
最終的に頂捕はどうなるのか。中国に帰るとテロ犯として追われることになる。日本政府も中国からの圧力に屈する可能性が高い。頂捕がアメリカへ亡命した場合は、実験材料にされる可能性がある。それらの状況にありながら、どのような対応策があるのか。
頂捕という特殊な存在が、大多数の普通の人間の中で平穏に生活することはできない。物語の結論としては、頂捕の存在意義については語られていない。多数の組織の綱引きにより翻弄されるしかない存在だ。
頂捕という特殊な存在は、平穏に生活することはできない。
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