2019.11.25 鬼に魅せられた剣士 【今昔百鬼拾遺 鬼】
今昔百鬼拾遺 鬼 (講談社タイガ) [ 京極 夏彦 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
連続して人が日本刀で切りつけられるという事件が発生した。七人目の被害者である片倉ハル子は同級生に、自分は刀で切り殺されるということをつぶやいていた。辻斬り事件の犯人と思わしき人物が逮捕されたのだが…。そこには様々な矛盾点があった。
敦子が情報を集めて事件の真相を解き明かす。鬼をテーマとした作品だけに、人を鬼に変えてしまう魔剣の話と想像したのだが…。早々と事件の犯人的なものは想像できた。最初はぎこちなかった辻斬りが次第に慣れてくる。最後には人をバサリと一刀で切り殺すまでに成長する。状況証拠から犯人は想像できるのだが、凶行にいたる経緯が物語の唯一のポイントだろう。鬼に魅入られた犯人の心情は最後まで知ることができない。
■ストーリー
「先祖代代、片倉家の女は殺される定めだとか。しかも、斬り殺されるんだと云う話でした」昭和29年3月、駒澤野球場周辺で発生した連続通り魔・「昭和の辻斬り事件」。七人目の被害者・片倉ハル子は自らの死を予見するような発言をしていた。ハル子の友人・呉美由紀から相談を受けた「稀譚月報」記者・中禅寺敦子は、怪異と見える事件に不審を覚え解明に乗り出す。
■感想
連続辻斬り事件が発生した。最後の被害者と友達であった美由紀は敦子に状況を説明する。「河童」と同様に妖怪をテーマとした怪異が描かれてる。あからさまに妖怪の仕業という流れではない。事件が辻斬りなので明らかに人が手をかけているので…。
となると、なぜそのような行動を起こしたのか?ということになる。美由紀は友人のハル子が辻斬りの被害者となったことで、事件の謎を解き明かそうとする。物語の流れからすると、読者には犯人があっさりと想定できてしまう。ただポイントはどのような理由で、と言う部分だ。
ハル子は生前に美由紀に対して、片倉家の女は殺される定めということをつぶやいていた。それが現実のものとなる。呪われた刀によって殺されたのか。片倉家は代々呪われた家系なのか。ハル子とどのような関係があるのか。「河童」に比べると謎の部分が弱い。オチが判明したとしてもそこまで納得感はない。
鬼に魅入られた呪われた刀。それを使ったのは小柄な人物。最初は慣れないため相手にちょっとした傷をつける程度。それが慣れてくると相手を一刀両断できてしまう。その絵を想像したら恐ろしくなる。
ラストでは事件のカギを握る人物が、事件の全容を明らかにする。刀の研ぎ士、ハル子の母親、そして当初は犯人と思われていた男。片倉家の呪いは実は呪いでもなんでもない。すべてを敦子が論理的に説明して呪われたと思いこんでいた者たちを救う。
その結果、強烈なつきもの落としとはならないが、なんとなく敦子は兄と同じような雰囲気をだしている。本格的に中禅寺が登場することはないのだが、敦子レベルでも解き明かせる謎というのが程よいのだろう。
同シリーズでの「天狗」はどのような流れか楽しみになってきた。
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