希望の地図2018 


 2019.12.15      震災、その後を描くことが重要だ 【希望の地図2018】

                     
希望の地図2018 (幻冬舎文庫) [ 重松清 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
大きな災害に見舞われた人たちは、その後どのような生活を送っているのか。復興はすすんでいるのか。災害直後ではマスコミの報道合戦が激しいが、1年もたつと周りの人々からは忘れ去られている。そんな状態を危惧した作者が、復興に力をいれているそれぞれの町でインタビューをしている。

復興の形は様々だ。東日本大震災で被害を受け移住せざるお得なくなった人々。熊本の震災や広島の大雨の被害。そして、大阪の台風21号や、岡山の水害まで。ここに、関東の台風19号もいずれ入ることだろう。台風19号の報道で首都圏と地方の注目度の差というのをまざまざと思い知らされた。とり残された形の地方の人々は、まだ復興のために必死に頑張っている。

■ストーリー
災害によって人生が一変し、それでも「希望」を捨てなかった人がいる。借金を返済しながら新しい漁業の道を模索する石巻の漁師。原発事故による避難指示が解除された南相馬市にデイサービスをつくった介護士。ボランティアとしてやってきた石巻に移住して自分の店を開いた料理人…。一年間、全国を横断して取材をつづけた、被災地の素顔。渾身のルポルタージュ。

■感想
前作「希望の地図」は、東日本大震災直後の福島をルポ形式で描いていた。本作ではそれから6年たった福島の状況も描かれている。除染作業で発生した大量の汚染された土。それを貯蔵している場所もある。もう故郷に住むことができない人々。中には新天地で心機一転頑張る者もいる。

故郷が忘れられず復興に必死になる者もいる。年齢層が若干作者より若いため、これから頑張るというパワーあふれる雰囲気がでている。そして作者自身もそれを感じている。震災直後だけ注目されるよりも、その後を追いかける方が重要なように思えた。

その他の地域の災害後の状況も描かれている。熊本の地震の状況はかなり特殊なのだろう。本震と思われていたのだが、実は余震でより強い地震が後にくる。その後、熊本城の一部が倒壊する。実は熊本は地震が起きない安全な地と思われていた。それが…。

結局のところ日本中どこでも地震は起きるということだ。そこからどのようにして復興していくのか。何かあればすぐに自粛騒ぎになることについての反発めいたことも描かれている。誰かが不謹慎だと言い出すと、途端に同調し叩き始める。嫌な世の中だ。

広島の水害や大阪の台風21号についても描かれている。ついつい忘れがちだが、甚大な被害を受けた地域だ。関東にも台風19号が来て激しく被害を受けた地域がある。情報が新鮮なうちは報道されるのだろう。ただ、これが1カ月も過ぎるとほとんどの人から忘れ去られてしまう。

被害を受けた人々は必死に復興しようとする。家が水に流されたり、一階部分が全て浸水した状態から、そう簡単に復興できるはずがない。想像を絶する困難さだろう。感覚がマヒしているが、すさまじい状態だ。

忘れかけた、被害を受けた地を思い出すきっかけになる作品だ。



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