2018.3.1 人のよい坂田がヤクザに巻き込まれる 【語りつづけろ、届くまで】
語りつづけろ、届くまで 講談社文庫/大沢在昌(著者)
評価:2.5
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■ヒトコト感想
サラリーマンの坂田が主人公のシリーズ第3弾。今回の坂田は詐欺事件の片棒を担がされようとしたり、ヤクザ絡みの3億円もの大金が絡んだ事件に巻き込まれてしまう。巻き込まれ体質である坂田の本領発揮というところか。老人会では老人たちには人気があり、ちょっと気になるバツイチのトラック運転手の女性が登場したりと、今までほどハードな展開はない。
ただ、後半になるとヤクザに脅され、仕方なく様々な依頼をさせられることになる。坂田がドライな考えをもち、ちょっとした知り合いなら冷たく見捨てるような性格であればここまで巻き込まれないだろう。ヤクザも堅気である坂田をとことん利用しようとする。坂田が警察に駆け込まないとわかっているからこその行動だ。
■ストーリー
「日本一不幸なサラリーマン」が奮闘する『走らなあかん、夜明けまで』『涙はふくな、凍るまで』人気シリーズ最新作。食品会社のサラリーマン・坂田勇吉は新商品を宣伝するため、東京下町の老人会に通っていた。
老人たちやボランティアの咲子の心もつかんでいた彼に、健康枕のセールス指導のバイトが持ちかけられる。打合せ会場に着いた坂田の目の前には、刺殺体が。ヤクザがらみの厄介な事態に巻きこまれた坂田に危険が迫る!
■感想
坂田はセールスマンの腕をかられ、老人会で人気者となる。そこに目を付けた詐欺師の男が、ひそかに坂田に詐欺の片棒を担がせようとする。序盤では、坂田は詐欺事件に巻き込まれる直前に警察にアドバイスされ結局詐欺犯罪から逃れられたが、それでもおとり捜査をやらされるはめになる。
このあたり、人が良すぎる坂田だけに警察の強引な依頼を断ることができない。本作のキャラクターたちは、普通ならば通らないようなめちゃくちゃな依頼を坂田にし、それを坂田が受けてしまうという若干の不自然さがある。
詐欺事件から逃れられたと思った矢先、次の事件に巻き込まれることになる。ヤクザが絡み、3億もの大金が絡み、さらには死体まで。となると、坂田はいち早く警察に駆け込むべきだが、そうしない。人質をとられているとはいえ、どこまで付き合うのかというほど事件に首を突っ込んでいる。
ヤクザは縄張りがあり動けないとなると、カタギの坂田を利用しようとする。坂田はヤクザに利用されながらも、独自の調査で新事実を明らかにしようとする。この流れが坂田らしい。
ラストは堅気の坂田が強気にでることで、ヤクザ達を出し抜く行動となる。今までの作品の坂田と比べると、本作はそこまで窮地に追い込まれてはいない。命を奪われるという脅しはあるにしても、暴力をふるわれボロボロになるなんてことはない。
危険度が今までのシリーズと比べるとだいぶ緩い。そのため、知能戦の様相が強い。強烈なインパクトはないのだが、シリーズのファンならば問題なく楽しめるだろう。坂田がそこまで危機におちいることがないので、今までのファンからすると物足りないと感じるかもしれない。
平凡なサラリーマンが主人公のハードボイルドだ。
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