2015.4.27 昔の大阪をイメージ? 【走らなあかん、夜明けまで】
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■ヒトコト感想
東京のサラリーマンが大阪へ出張し、ヤクザ絡みのいざこざに巻き込まれる物語。古い大阪のイメージをそのまま具現化したような作品だ。大阪には住んだことはないが、たびたび訪れたことがあるので、なじみはある。コテコテの大阪弁と、だれもがイメージする大阪を描いている。
東京から出張でやってきた坂田が、ちょっとした行き違いからジュラルミンケースを奪われ、ヤクザの事務所へひとりでのりこむ羽目になる。坂田が弱弱しい普通のサラリーマンで、ヤクザに殴られても反撃はできない。ごく普通のサラリーマンの坂田が、自分を助けてくれた女性のために大阪の街を奔走する。主人公がやられたら、やられっぱなしなのが特徴かもしれない。
■ストーリー
東京っ子の会社員が出張先の大阪で間違って大事な鞄を盗まれる。極道たちの手から取り戻すため、キタからミナミと初体験のナニワの街を命がけの大爆走、大追跡。ヤクザ同士のメンツをかけた争いに巻きこまれ、次々襲ってくる過酷な状況に涙をふり払って立ち向かう。息づまるワンナイト・チェイスの興奮。
■感想
昔の東京人がイメージする大阪という感じだ。登場人物たちはコテコテの大阪弁を話し、大阪の街を移動し、大阪の名物を食べる。大阪になじみのない人には、大阪とはとんでもなく恐ろしい街のように感じるかもしれない。自分のイメージとしては、仕事上の付き合いだけでは、大阪を感じることはほとんどない。
東京も大阪もほとんど変わらないという印象が強い。本作では、あえて大阪色を強くだそうと、コテコテの大阪ヤクザを登場させている。ヤクザに絡まれ、事務所にひとりでのりこんだ坂田。大事なプレゼン資料を取り返すことができるのか。
大阪のヤクザの坂田に対する仕打ちはむちゃくちゃだ。坂田にまったく非がないにも関わらず、敵対するヤクザから5千万を取り戻せと言われる。ヤクザに殴られ、そのヤクザと敵対するヤクザにも殴らる。ボロボロの主人公というのも、作者の作品の中では異色だ。
喧嘩が強いわけでも、特別頭が良いわけでもない。ごく普通のサラリーマンが大阪のヤクザに気の毒なほど滅多打ちにされる。本作を読むと、大阪のヤクザはカタギに対してむちゃくちゃなことをするイメージばかりが残っている。
坂田を助ける真弓。坂田と関わったことでヤクザに囚われの身となる。そこで、ケンという男に助っ人を頼む。このケンが強烈にキャラ立ちしている。ヤクザにもひるむことなく立ち向かい、ヤクザをあっさりと倒してしまう。坂田の頼りなさをすべてケンが補完しているような形だ。
最後までケンの力ですべてを解決し、真弓を取り戻すかと思いきや…。ケンは途中で退場してしまう。そこからは、坂田がひとりで金と真弓を取り戻すために奔走する。ラストの流れは多少無茶だが、坂田ひとりですべてやりきったということなのだろう。
大阪を知らない人がイメージする、わかりやすい大阪を描いている。
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