ψの悲劇 


 2018.11.11      森博嗣作品同士でリンクしている 【ψの悲劇】

                     
ψの悲劇/森博嗣
評価:2.5
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■ヒトコト感想
Gシリーズ。今回も謎多き真賀田四季の仕掛けにより、様々な状況が発生する。四季の傀儡のような存在である島田文子が登場してくるのだが…。今回は冒頭が、まるで本格ミステリーのように屋敷に様々な人々が集められ、そこで殺人やネコの毒殺、さらには子供が毒を飲むなどの事件が起こる。本作の一人称はお手伝いさんなのだが、ここにも大きな仕掛けがある。

ウォーカロンシリーズと同様かと思うほど、テクノロジーの発展した未来の内容となっている。失踪した八田洋久の痕跡から様々な推理を働かす。ただ、オチを考えるとあまりにもずるいように思えてしまう。ある意味叙述トリックと言えるのかもしれないが、未来ではミステリー的なトリックは一切通用しなくなりそうな気がした。

■ストーリー
遺書ともとれる手紙を残し、八田洋久博士が失踪した。大学教授だった彼は、引退後も自宅で研究を続けていた。失踪から一年、博士と縁のある者たちが八田家へ集い、島田文子と名乗る女性が、実験室にあったコンピュータから「ψの悲劇」と題された奇妙な小説を発見する。そしてその夜、死が屋敷を訪れた。失われた輪を繋ぐ、Gシリーズ後期三部作、第二幕!

■感想
「ウォーカロンシリーズ」と錯覚を覚えるラストの展開だ。序盤では森博嗣作品では珍しく、失踪した洋久をしのぶために関係者が屋敷に勢ぞろいする。そんな状態で殺人事件が起こる。屋敷に集まった誰が犯人なのか。屋敷のメイドである女は、島田文子があやしいと考えるのだが…。

このまま当たり前のミステリーとはならないことは想定していた。ただ、オチは想定外だ。洋久が失踪したかと思いきや、実は常に存在していた。そんなオチはなしだ、と本格ミステリーファンは思うことだろう。

屋敷のメイドである私が屋敷に来る人々の世話をしながら、失踪した洋久の状況を調査する。島田文子は明らかに何かおかしな雰囲気がある。このシリーズは真賀田四季から逃れることはできず、四季の操り人形でもある文子がどのような行動をとるのか。

後半では文子の言動が奇妙になり始め、私が殺人者と疑われたりと、読者からするとよくわからない状況になる。これはすべて物語の中の島田文子は認識しているが、読者は認識していないことがあるからだ。

洋久の失踪と私は大いに関係があった。また、文子が洋久は生きているといった意味もわかる。結末まぢかでは、私自身もそのことを理解して思考する。「ウォーカロンシリーズ」を読んでいたからこそ、すんなりと入りこむことができた。

もはや年齢は関係のない世界になり、四季の存在やS&Mシリーズのキャラなどは跡形もなく消え去っている。四季の脳というか意識や考え方が未来にも引き継がれているということなのだろう。極度の天才にとっては、肉体の死は関係ないのだろう。

森博嗣作品同士でリンクしているのは確かだ。



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