帰ってきたアルバイト探偵 


 2018.8.23      私立探偵がたずさわる規模の事件を超えている 【帰ってきたアルバイト探偵】

                     
帰ってきたアルバイト探偵 講談社文庫アルバイト探偵シリーズ6/大沢在昌
評価:3
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■ヒトコト感想
アルバイト探偵シリーズ第6弾。今回は今までよりもさらにスケールアップしている。物語のカギとなるのが小型の核爆弾で、それを狙うのは危ない思想をもつテロリストやヤクザに中国まで。すでに一介の私立探偵が対処できる規模の事件ではない。武器商人モーリスが死ぬ間際に残した核爆弾。それをめぐる争いが勃発するのだが…。

モニークという美少女が登場することで、隆が事件に巻き込まれることになる。規模が規模だけに内閣調査室の島田が登場してくるのだが…。いくら優れた能力をもつとはいえ、私立探偵が東京の運命を握るような事件にメインキャストとして入り込むのはやりすぎだ。規模が大きすぎたために、いつものアルバイト探偵的な軽い雰囲気が消滅している。

■ストーリー
武器商人モーリスの死体が六本木の再開発地で発見された。七年前に失踪した彼の最後の商品は、小型核爆弾―都心に隠された爆弾を探すために、内閣調査室はあの親子に依頼した!鍵を握るのはとびっきりの美少女、モニーク。隆クンと涼介親父が命がけのジョークでテロリストに挑む、人気シリーズ帰還。

■感想
長大な物語だ。最初は隆がちょっとした違法なバイトに手を出し、そこから数珠繋ぎのように大きな事件へと発展していく。モニークという美少女と知り合ったことも、隆が事件に巻き込まれる重要な要素のひとつとなっている。

武器商人のモーリスが生前に残した核の小型爆弾。それをモーリスがどこに隠したのか。必死で探し回る様々な勢力の者たち。怪しげな思想をもつ「聖人」たちは、腐りきった日本人を滅ぼそうと、東京の真ん中で核爆弾を爆発させようとする

とんでもないテロリストとやくざが核爆弾を手に入れようと暗躍する。そこに中国が加わり、さらにややこしいことになる。当然ながら内閣調査室の島田たちは日本を守るために冴木親子を利用しながら核爆弾を手に入れようとする。

冴木親子は当然のように危険なことに足を踏み入れる。隆はなんども敵対する組織に監禁されたりもする。モニークを助けるために危険な場所へと入り込む。この段階では、隆はお気楽なアルバイト探偵の域を大きく超えているのは間違いない。

事件は東京が滅亡するかしないかのレベルにまで拡大している。国家を上げて防ぐべき事象のはずが、お決まり通り冴木親子が大活躍することでテロリストの計画は失敗することになる。ハードボイルドとは異なった、本シリーズ独自の良さであるお気楽な感じが一切ない。

事件の規模を大きくしたことが要因なのだろうが…。女の子をナンパし遊びながら軽い感じでアルバイト代わりに探偵をする。ピンチになれば親や島田に頼る。そんなイメージをはるかに超えた深刻すぎる事件となっている。

アルバイト探偵シリーズ最大の事件だろう。



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