女王陛下のアルバイト探偵 


 2018.6.11      冴木親子が女王を守る 【女王陛下のアルバイト探偵】

                     
女王陛下のアルバイト探偵 広済堂文庫アルバイト探偵シリーズ3/大沢在昌
評価:3
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■ヒトコト感想
アルバイト探偵シリーズ。今回は初の長編ということで、時事ネタは少ない。東南アジアのライール国の王女を守る任務をうけた冴木親子。定番だが、王女は隆と同年代であり、ちょっとしたラブストーリー的な展開となる。そして、これまた定番だが身分の違いに苦しむことになる。

長編ということで、相対する敵も強力だ。プロの殺し屋たちに狙われる王女と冴木親子。そこに怪しげな宗教団体も加わり、物語は混沌としてくる。何度も絶体絶命のピンチに陥りながらも、危機を乗り越えていく冴木親子。ラストでは王女の秘密が明かされることになる。ナンパや六本木での遊びという今までのシリーズのイメージからすると、ハードボイルド風味が強くなっている。

■ストーリー
不良中年私立探偵の親父のもとに内閣調査室副室長が持ち込んできた依頼は17歳の王女様の護衛だった。東南アジアの島国ライールの王位を巡る陰謀で命を狙われている王女が来日したのだ。王女を守るアルバイト探偵(アイ)・隆(リュウ)にショットガンが向けられた。けなげに王女をガードする隆クンのピンチ。シリーズ初長篇。

■感想
冴木親子のもとにライール国の王女を守るという依頼が舞い込んでくる。王位継承争いに巻き込まれた王女を守るということで、当然、相手は本気だ。送られてくる刺客もプロばかり。スナイパーや爆弾魔まで。元冴木父と同僚であった者までいる。

まさにとんでもない仕事に足を踏み入れた隆だが、そこはお気楽な語り口調で、あまり深刻さを感じさせない。冴木親子の語り口調は常にユーモアを交えている。敵に囲まれた状態であっても、冗談で相手を煙に巻こうとする。この部分が本シリーズの特徴だろう。

プロのスナイパーに狙われようと、隆はバイクを駆使して逃げ回ってしまう。怪しげな宗教団体に狙われ、毒矢を吹き付けられたとしても。そして、ついには爆弾魔にプラスチック爆弾を背中につけられてしまう。周りの知り合いや自分が爆弾魔の人質になろうとも、どうにかして王女を助け出そうとする。

普通ならば、危険な仕事をほっぽり出して普通の受験生に戻りたいと考えることだろう。隆の前向きな性格は間違いなく父親の影響を受けている。もはやシリーズとしては血が繋がっていないのは判明しているが、本作では親子に見えてしまう。

ラストはライール王国で王女が日本にやってきた理由や、宗教団体の目的などが語られることになる。冴木親子が護衛に選ばれた理由も明かされる。そして、王女との別れを惜しむ隆。なんだか定番的流れではあるが、今までのアルバイト探偵シリーズとはかなりトーンが違っている。

親子そろって女好きでナンパ師であるはずが、王女に対してはプラトニックを貫き、依頼を完遂しようとする。お気楽な感じで逃げ出すこともできたはずだが、隆のキャラがだいぶ変わってきているのは確かだ。

このシリーズは回を重ねるごとに変化している。



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