ひこばえ 下 


 2020.12.25      50代の子どもと70代の親の物語 【ひこばえ 下】

                     
ひこばえ 下 [ 重松清 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
上巻では出て行った父親がどのような生活をしていたかをたどるような流れであった。洋一郎の家族は複雑ではあるが、孫ができて幸せな生活をしていた。そんな時に、幼少期に出ていった父親が死んだと知らされる。まったく音信不通だった実の父親はどのような生活をしていたのか。それと同じように息子に迷惑をかけてばかりと自虐的な思いが強い後藤というおじいさんが洋一郎の施設へ入居してきた。

下巻ではこの後藤さんを中心として親子の関係とはどのようなものかを描いている。息子が50歳で父親が70歳の親子関係を描いた作品は少ないだろう。孫ができる年代の男は、父親とどのような関係を築くべきか。終活を含めた家族のあり方が描かれている。

■ストーリー
老人ホームの施設長を務める洋一郎は、入居者たちの生き様を前に、この時代にうまく老いていくことの難しさを実感する。そして我が父親は、どんな父親になりたかったのだろう?父親の知人たちから拾い集めた記憶と、自身の内から甦る記憶に満たされた洋一郎は、父を巡る旅の終わりに、一つの決断をする―。

■感想
洋一郎は父親の生活をたどる旅により、様々なことを知る。金にはルーズで周りに大迷惑をかけてきたことには変わりない。神田さんという唯一の友達のような存在があったと知り、より父親像がはっきりしてくるのだろう。

父親が自分自身の私小説を書こうとしていたことにも驚きはあるのだろう。母親や姉からはダメな父親と憎まれてはいたが、遺骨となってからは故郷の思い出の地をめぐる。ある意味、洋一郎の親孝行なのだろう。50代の子供と70代の親となると、終わりを見据えた考え方となるのは当然だろう。

洋一郎の施設に新たにやってきた後藤さん。息子は新進気鋭の起業家として有名人である。ただ、後藤さん的には満たされない毎日を過ごしている。誰にも必要とされない状態なのだろう。何不自由ない生活ができたとしても、そこに幸せはない典型だろう。

息子を厳しくしつけてきた父親がある日、息子に全てを抜かれていたと気づいた時どうなるのか。部屋はゴミ屋敷となり、アル中になる寸前までとなる。後藤さんの立場はまた複雑だが息子との関係が重要なことには変わりない。

洋一郎の父親と後藤さん。タイプは違えど、息子や家族との関係がうまくいっていないのは同じだ。なぜか神田さんが間にはいるような形で後藤さんは変わっていく。そして、息子とも和解していく。50歳の男は、普通ならば子供のことや孫のことでの悩みが大半だろう。

自分の定年後の生き方についてなどもあるかもしれない。本作ではそのあたりをすっとばし、高齢の親についてのことがメインで描かれている。母親がどこの墓にはいるかの問題など、今までにない世代での物語となっている。

作者の年齢に合わせて、悩みの世代が変わってくるのだろう。



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