花咲舞が黙ってない 


 2018.4.26      銀行合併によるドロドロとした駆け引き 【花咲舞が黙ってない】

                     
花咲舞が黙ってない [ 池井戸 潤 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想

不祥事」「銀行総務特命」シリーズが原作のドラマ化があり、そのドラマからタイトルをいただいたのが本作だ。臨店指導グループが支店の不祥事を暴くという今までのストーリーから、今回は合併に向けてのきな臭い政治的な判断による隠ぺいなどが語られている。さらには、作者の看板シリーズである半沢直樹が、合併相手の若手有望株として登場し、舞たちに刺激を与える存在となっている。

もはやこのシリーズは作者のライフワークなのだろう。銀行同士の合併というのは、銀行内部の権力争いが如実に表れる部分だ。そのため、敢えて不正を隠ぺいし見て見ぬふりをすることが銀行の利益になると考える勢力もいるということなのだろう。

■ストーリー
その日、東京第一銀行に激震が走った。頭取から発表されたライバル行との合併。生き残りを懸けた交渉が進む中、臨店指導グループの跳ねっ返り・花咲舞は、ひょんなことから「組織の秘密」というパンドラの箱を開けてしまう。隠蔽工作、行内政治、妖怪重役…このままでは我が行はダメになる!花咲舞の正義が銀行の闇に斬り込む痛快連作短篇。

■感想
メガバンク同士の合併というのはよくある。それらの合併においては、裏で激しい主導権争いがあったのだろう。本作では臨店指導グループの舞と、東京第一銀行で合併に向け自行を有利にさせようとする勢力との激しい綱引きがポイントかもしれない。

合併を有利に進めるためには、今のタイミングでの問題はよろしくない。となると、不正を隠ぺいする方向へと流れていく。副頭取レベルの権力者がそのような動きを部下に指示する。まさに銀行の暗部をそのまま読まされているような作品だ。

半沢直樹だけはどの立場でいても、精錬潔白のように思えてしまう。舞たちの合併先である銀行で、若手のホープとして登場してくる半沢直樹。幹部たちが集まる場においても臆することなく発言し、さらには自分が良いと思ったことは断行する。

若いころから、あの半沢直樹だ。舞たちは刺激を受けるが、あくまでも半沢直樹はオマケでしかない。銀行をあげての不正を目の当たりにしたとしても、舞たちはどうすることもできない。

現実の事件を彷彿とさせる流れもある。巨大メーカーが不正会計をしていた。東京第一銀行はそのことを知っていたのか否か。まさに東芝の事件を思い起させる流れだ。東芝の事件では監査法人がどこになるのかすら決まらない状況だったのだが…。

本作では銀行にも大きな責任があるという流れとなっている。合併するにあたって大きな不良債権を隠しもっているのではないか、という疑惑や、不正が隠されているのではないかという疑念。それらを隠ぺいしようとする銀行の幹部たちの汚い思惑が渦巻いている作品だ。

半沢直樹とはテイストの異なる銀行を舞台にした物語だ。



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