銀行総務特命 池井戸潤


 2015.9.6      銀行内部から嫌われる存在 【銀行総務特命】

                     
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■ヒトコト感想

総務内に社内の不正を処理する特命を受けた者がいる。それが指宿だ。銀行での不正は、金を扱う仕事だけに起こりやすい。単純な横領だけでなく、顧客名簿の流失から現役銀行員のAV出演まで。様々な問題を処理するのが特命を受けた指宿だ。お決まり通り、警察の公安と同様に、内部からは嫌われた存在となる。

特命として副頭取から直接任命された指宿の存在を煙たがる者もいる。それは自分自身にやましいところがあるなしに関わらず存在する。指宿の邪魔をしようとする存在や、あえてスキャンダルを作り、そこから指宿を罠にはめようとするなど、手の込んだ謀略に満ちている。銀行内部の膿をだす特命には、様々な圧力がかかるのは当然だろう。

■ストーリー

帝都銀行で唯一、行内の不祥事処理を任された指宿修平。顧客名簿流出、現役行員のAV出演疑惑、幹部の裏金づくり…スキャンダルに事欠かない伏魔殿を指宿は奔走する。腐敗した組織が、ある罠を用意しているとも知らずに―「総務特命担当者」の運命はいかに!?

■感想
特命という名のもとに銀行内部の不正を暴く。お決まりなのは、融資先の経営者と結託して資金を融資する代わりに金銭的見返りを求める。銀行としての定番的流れとは別に、特命として様々な不正へ対処することになる。

単純に不正を暴くだけでなく、銀行内部での権力争いの流れも見えてくる。総務と人事。銀行の人事は、銀行員のすべての命運を握っているといっても過言ではない。今までの池井戸作品では、人事部により出向先を決められ、地獄へまっさかさまというパターンが多い。

権力争いは、つまり足の引っ張り合いとなる。あえてスキャンダルを作り、それを暴こうとする指宿を罠にはめようとする人物もいる。普通の一般行員とは別に、ドロドロとした流れというのは見えない部分にこそあるのだと思い知らされる作品だ。

巨大銀行であればあるほど、様々な行員がいる。その中で不倫相手に仕返しするためにAVに出演しようと考える行員もいるだろう。ある意味泥臭く、汚れ仕事をすべて引き受けるようなイメージが特命にはある。

作者の銀行を舞台にした作品の中で、定番的事件を扱うものもあれば、その他、特殊な状況もある。特徴的なのは、不正を暴き黒幕へ真実を突きつけたところで終わっている部分だ。その後、黒幕的人物がどうなったとか、関わった人物にどのような処分が下されたかはわからない。

悪を言い逃れできない状況へ追い込み、決定的な事実を突きつける。その爽快感で物語は終わる。ばっさりと終わる印象があるのだが、物語は完結しているので問題はない。

特命は、さながら警察組織における公安のような立場なのだろう。



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