2019.1.26 拉致される鮫島 【灰夜 新宿鮫7】
灰夜新装版 新宿鮫7 長編刑事小説 (光文社文庫) [ 大沢在昌 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
新宿鮫シリーズ第7弾。今回は鮫島が自殺した同僚・宮本の法事に参加したことで、ごたごたに巻き込まれることになる。大きな事件が起きるわけではない。麻薬取締官が鮫島周辺にいたことにより、地元のヤクザに余計な誤解を受け、山奥に拉致されることになる。
犯人がわからないミステリアスな事件ではない。地元のヤクザと実業家を巻き込んだ騒動に、鮫島が影響を受けている。宮本の幼馴染の古山や、古山の妹の栞、バーのママなど、鮫島は行く先々で協力者を得るのだが、その分敵も作っている。強烈なのは悪徳刑事である上原だ。ヤクザとの付き合いは当然として、麻薬取引の利権にからもうとする。北朝鮮への不正輸出なども絡めて鮫島が大暴れする。
■ストーリー
寒気に包まれた檻の中で鮫島は意識を取り戻した―。自殺した同僚・宮本の七回忌で、鮫島は彼の故郷へやってきた。故人の旧友・古山をはじめ、古山の妹・栞、麻薬取締官・寺澤、不良警官の上原、バーのママ・平良マリー…、多くの人々と出会った。そして、その夜、拉致された。誰が何を目的に鮫島を狙ったのか!?底知れぬ闇が広がる!新宿から遠く離れた見知らぬ街で、孤立無援の闘いに鮫島は身を投じる。
■感想
今回の鮫島は宮本の法事に参加したことで、誤解をうけ拉致されてしまう。マトリ(麻薬取締官)が古山を監視していたことから、地元のヤクザに危機感が生まれ、それがエスカレートし鮫島の拉致へとつながる。
山奥に監禁されていた鮫島は解放されてから、東京に帰らなければ古山が死ぬと脅されることになる。ここで、鮫島は自分の信念を貫き古山を救出しようとする。鮫島はどこにいっても味方を作るが、それ以上に敵を作ってしまう。今回も様々な人物から恨まれ攻撃されることになる。
栞やバーのママなど相変わらず鮫島は美女との交流がある。古山を助けるために協力を依頼したりと、鮫島には協力者がいるが、敵も多い。鮫島は警部という素性は隠しているのだが、その匂いをかぎ取り鮫島がただ者ではないと感じた者たちは、鮫島を排除しようとする。
地元の悪徳刑事である上原はヤクザと結託し利権を得ている。自分の邪魔者に対しては徹底的に排除しようとする。上原にとっては、自分の悪事が暴露される危険性があるならば、関係者全員を殺すこともいとわないという恐ろしい考えの持ち主だ。
物語は北朝鮮からの帰化や北朝鮮が軍事利用可能な機器の輸出に関する問題にまで発展する。祖国を守るためにひたすら暗殺を繰り返す謎の男が登場し、関係者が次々と殺されていく。このあたり「毒猿」にも通じるような恐ろしさがある。
暗殺者や地元のヤクザ、そして悪徳刑事。それらと対決するはめになった鮫島は、最後に自らの信念を貫きとおすことになる。公安の秘密を握り続けている鮫島は、常にどこにいっても監視対象であり、それが思わぬ事件を生み出すということだ。
シリーズとしては、ミステリアスな要素は弱い。
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