毒猿-新宿鮫2 大沢在昌


 2015.3.3      恐怖の殺し屋、毒猿 【毒猿-新宿鮫2】

                     
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■ヒトコト感想

シリーズ2作目。本作では鮫島はそこまで活躍しない。毒猿とヤクザの戦いがメインとなる。強烈なのはやはり殺し屋毒猿だ。殺し屋としての技術もそうだが、情け容赦ない殺戮マシーンとしてのインパクトがすさまじい。情報を得たければ相手を拷問し、目的が達成されれば、あっさりと殺してしまう。

毒猿に狙われると生き残ることはできない。そんな毒猿と、仲間を殺され怒り狂うヤクザたちの戦いが強烈だ。鮫島は警官として毒猿を逮捕しようとするが、できるわけもなく、ヤクザたちも殺されていく。完璧な殺し屋である毒猿を止めることができるのは病気だけ。ミステリーというよりも、毒猿対ヤクザの激しい戦いがメインとなっている。

■ストーリー

歌舞伎町の女・奈美。孤独な彼女が心惹かれる外国人・楊は、謎の影を持つ男だった。一方、「新宿鮫」と恐れられる新宿署刑事・鮫島は、完璧な「職業兇手」(殺し屋)が台湾から潜入していることを知る。「毒猿」と呼ばれる男が動きはじめた刹那、新宿を戦慄が襲う!鮫島は、恐るべき人間凶器の暴走を止められるのか?奈美の運命は…。

■感想
台湾から来た殺し屋・毒猿。毒猿を追いかけ日本にやってきた台湾刑事の郭。鮫島は、最初は郭と知り合い、そこから毒猿の力を知る。最初は毒猿の力ははっきりとは示されない。ただの不法就労者としての存在でしかない。

毒猿の、淡々と相手を始末する行為は、圧倒的な魅力がある。非常に残酷だが、行動が一貫しているのでそれほど不快ではない。さらには、敵対組織がヤクザなので、ヤクザの圧倒的な物量に対してたった一人で立ち向かう毒猿を、どうしても応援したくなる。

鮫島はいちおう登場するのだが、毒猿とヤクザたちの戦いの陰に隠れている。鮫島らしく、囚われの身となった女を助けたり、強引な捜査で毒猿の居所を探り出そうとしたり。鮫島の味はでているが、それでも毒猿のインパクトによって、鮫島が霞んでしまっている。

ヤクザはその組織力で毒猿を追い詰めていく。毒猿、ヤクザとそれぞれの個性で力を発揮しているのに比べると、鮫島は活躍の場を奪われてしまったような感じかもしれない。悪くはないが、主役の座を毒猿に奪われてしまっている。

毒猿の魅力はその圧倒的な殺し屋の技術にあるのだろう。ウェットスーツを着て池に飛び込み、暗闇の中、浮かび上がったかと思うと、相手の喉を掻き切る。ヤクザがどれだけ人数を集めたとしても、毒猿のフィールドでは歯が立たない。

鮫島さえも毒猿の前では物の数に入らない。新宿鮫シリーズとは別の面白さがある。ネリチャギで相手の頭蓋骨を割るような恐ろしい殺し屋と鮫島を比べてしまうと、鮫島の暴力刑事というイメージも霞んでしまう。

毒猿のインパクトがすさまじすぎるため、他が霞んでしまっている。



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