2018.7.30 死につながるジェットコースター 【拷問遊園地 アルバイト探偵】
アルバイト探偵(アイ)拷問遊園地(アルバイト探偵シリーズ5) / 大沢在昌
評価:3
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■ヒトコト感想
アルバイト探偵シリーズ。今回は依頼人から受けとった赤ん坊をめぐる争いとなっている。いつもの冴木親子とネオナチの組織や右翼など、今回は強烈な2つの組織がひとりの赤ん坊を目当てに冴木親子に襲いかかる。序盤では怪しげな組織の全容がわからず、謎のヨーロッパ人の暗躍が不気味だという雰囲気だ。そこから右翼が登場し、冴木たちがひょんなことから面倒を見ることになった赤ん坊をめぐる争いとなる。
今回はタイトルにもあるように、隆が右翼側にとらえられ、拷問を受けるというのがメインだろう。建設途中の遊園地のジェットコースターに乗せられる。それは死へ一直線ということだ。対象者の心を折る拷問としてはすばらしい場所なのだろう。死につながるジェットコースターは恐ろしすぎる。
■ストーリー
死んだ取引相手の男が渡したのは籠に入った赤ん坊だった!?依頼人も行方不明となり事件の謎を調べ始めたアルバイト探偵隆クンは二人組の男にら致されてしまう。不良中年私立探偵冴木涼介の息子と知れた隆クンは死ぬより怖い拷問が待ち受ける遊園地行きを命じられた。秘密組織と戦う父子探偵に迫る危機。
■感想
冴木親子はひょんなことから赤ん坊の面倒を見ることになる。実はその赤ん坊が入っていた籠には高価な絵が隠されており…。お決まりどおり最初は意味のわからない冴木親子が赤ん坊相手に四苦八苦する場面がある。
そこからネオナチと右翼から狙われることになりドタバタが始まる。隆が右翼にとらえられ、その結果拷問にかけられ赤ん坊がいる場所を吐いてしまう。タイトルの拷問遊園地のすさまじさは強烈だ。乗れば死に一直線のジェットコースターは恐ろしすぎる。
拷問により秘密を暴露してしまった隆は自己嫌悪におちいる。いわば殺された状態である。そこから復活するためには、自分を殺した相手を殺すしかない。この殺されたというのは拷問により告白してしまったことだ。
相手にも同じ屈辱を味あわせることで隆のプライドは保たれ、復活できるということだろう。ネオナチの組織と右翼に挟まれる形の冴木親子。両組織を巧みに利用し、さらには別のヨーロッパ人の凄腕スパイを仲間に引き入れ、やっかいなふたつの組織と相対することになる。
ラストは隆が殺された相手を殺すために奮闘する。その過程では敵組織の美形や万力や鉄という変わったあだ名の者たちとの対決もある。オチはある程度想定できるが、この予定調和的な流れもよい。
元スパイの父親や、いざとなったら助けてくれる存在が多数いるする隆は、どんなピンチにおちいろうとも必ず助けがくるというのはわかっていることだ。そのため、物語全体としての緊迫感はない。ただ、ルパンやホームズのような、ある意味定番的流れというのは、読んでいて心地良くなることは確かだ。
シリーズモノだからこそ感じる面白さはある。
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