2018.7.7 スパイを養成する町 【不思議の国のアルバイト探偵】
不思議の国のアルバイト探偵 講談社文庫アルバイト探偵シリーズ4/大沢在昌(著者)
評価:3
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■ヒトコト感想
アルバイト探偵シリーズ。今回は隆が拉致され見知らぬ町で目覚めることになる。そこには、隆の家族だと主張する者たちがいる。まさに目が覚めた瞬間、今までのアルバイト探偵としての出来事がすべて夢であったかのように、絵にかいたような平凡な家庭がそこにはある。隆が平凡な家庭にあこがれているわけではないが、流されるように町の生活になじんでいく。
ただ不自然なこともある。TVがすべて録画放送であったり、父親が出張でいなかったり。周りからはルーキーと言われたり。明らかにおかしな状況のオチは後半に説明されている。スパイを養成するために町を作り上げ、そこで生活する者たちは、みなスパイとなり世界各国を飛び回る。とんでもない仕組みだ。
■ストーリー
一人ぼっちの戦いにアルバイト探偵大パニック。目覚めてみたら“お母さん”と“妹”が居て、見知らぬここが“我が家”だと主張する。真相を探りに町に出た隆クンは戦闘服の男や頭上を飛ぶ第二次大戦中のB29爆撃機を見て息を呑んだ。不良中年私立探偵の親父の助けもないまま“家族”を守り殺人鬼と戦う隆だが…。
■感想
冴木隆が謎の町に連れてこられ、見ず知らずの女を母親と言われ、妹までいる。身に覚えのない隆だが、母親と妹がさも当たり前に接することで隆はこの状況を信じそうになる。あまりに周りからおぜん立てされると、今までの自分の生活が夢で、今まさに目の前にある生活が本物のように思えるのかもしれない。
不良中年の父親とは別の、ごく平凡な家庭。周りがさも当たり前のように接してくると、それが常識のように感じてしまう。
隆はひねくれた性格なので、不良中年オヤジとの生活に戻りたいわけではないが、今の自分が納得しない状況が我慢ならないらしい。隆は独自で町の調査をはじめ、そこで殺人事件を目撃してしまう。そこからこの町の仕組みの不思議さが語られることになる。
スパイの才能がある将来有望な子供を町に連れてきて、スパイとしての英才教育を行う。スパイ養成に特化した町だが、そこで町を作り上げた創設メンバーが次々と何者かに殺されていく。
隆はスパイ養成の町の遺物として殺人鬼を探すことを命じられる。今回は不良中年オヤジはほとんど出てこないかと思いきや、結末間近で隆がピンチの時に颯爽と助けにやってくる。まさにおいしいところだけをもっていくような感じで、突然現れ、良いところをかっさらっていく。
家族を守り殺人鬼と戦いながら、不良中年オヤジとともに激しい戦いを繰り広げたりもする。スパイを養成するためだけに作られた町というのは強烈だ。そして、その先には…。
シリーズの中でも一風変わった作品だ。
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