2020.10.7 人間の嫌な部分がにじみでた人々 【不穏な眠り】
不穏な眠り/若竹七海
評価:3
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■ヒトコト感想
葉村晶シリーズ。古書店と探偵を兼業する葉村に様々な依頼が舞い込む。最初は簡単な依頼だと思い込んでいたのだが、実はめんどくさい状況となっている。葉村はなんだかんだと文句をいいながら依頼をこなしていく。調査員としての能力うんぬんやミステリーのトリックでの面白さではない。葉村がトラブルに巻き込まれるが、偶然の要素がありつつ解決していく物語だ。
ハードボイルドではない。依頼する人々がなんだか嫌な人物ばかりというのが物語としてはある。刑務所から出所したばかりの女をある女性のもとに連れていく仕事や、解体直前のビルの警備員を探す物語や、価値のある時刻表が盗まれた件を調査するなど、一風変わった依頼ばかりだ。
■ストーリー
葉村の働く書店で“鉄道ミステリフェア”の目玉として借りた弾痕のあるABC時刻表が盗難にあう。行方を追ううちに思わぬ展開に(「逃げだした時刻表」)。相続で引き継いだ家にいつのまにか居座り、死んだ女の知人を捜してほしいという依頼を受ける(「不穏な眠り」)。満身創痍のタフで不運な女探偵・葉村晶シリーズ。
■感想
「水沫(みなわ)隠れの日々」は、死んだ親友の娘を刑務所から連れてきてほしいという依頼だった。ただ人を連れてくるだけなので、簡単な依頼のはずだったのだが…。高速のパーキングで娘は何者かに拉致されてしまう。
高速のパーキングで周りに人がいる状況でありながら、娘は何者かに拉致されようとする。葉村の目の前で車に押し込まれようとする娘。強烈な状況だが、娘は無事に逃げ出すことに成功するのだが…。そこからヘンテコな方向に物語はすすんでいく。
表題作でもある「不穏な眠り」は強烈だ。相続で引き継いだ家にいつの間にか居座った女がいた。その女が、知らないうちに死んでいたということで、女の知人を探す依頼をうけた葉村なのだが…。そもそも女を家に連れ込んだ男の元を訪ねるが、そこで男の妻から殺されそうになる。
常識では考えられないような状況だ。人間関係的な複雑さもそうだが、妊娠中の妻の面倒をみさせるために若い女をお手伝いさん代わりとして住まわせるなんてのはちょっと特殊すぎる。
葉村晶シリーズとしての特殊さは、登場人物たちがかなり特殊だということだ。人間の嫌な部分があからさまに表現されている。ミステリ専門の書店に勤務しているというのがあるので、依頼としては価値のある時刻表を探す依頼もある。
葉村は探偵というよりも何でも屋的な流れとなっている。ミステリーとしてのトリックの面白さがあるわけではない。人間関係の複雑さと、思わぬ人間の嫌な部分が見えてくるというのが本作の売りなのだろう。シリーズのファンであれば十分満足できるだろう。
シリーズとしてはまだまだ続きそうだ。
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