2020.11.13 神の力がなければ返せない借金 【大名倒産 下】
大名倒産 下 [ 浅田次郎 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
上巻では、いつの間にか大名にさせられた小四郎が、藩の借金の実情を知り困惑する物語であった。父親から計画倒産のようなことすら告げられる小四郎。すべての責任を負わされた小四郎はどのようにしてこの窮地から脱するのか。25万両の借金は利息だけで3万両。にもかかわらず、藩の歳入は1万両。
どう考えても自己破産しかない。それを切り抜けるには周りの協力と神頼みしかない。上巻で貧乏神が登場してきたが、そこから七福神までも登場し、小四郎を助けるために奔走する。神の力により、故郷でとれる絶品の鮭を売ることで窮地を脱する。すべての借金の返済はできないのだが、今後の見通しを立て、商人たちを納得させた最後の納め方はすばらしい。
■ストーリー
御国入りで初めて見る故郷の美しさ、初めて知る兄弟の情。若殿は倒産阻止を決意するが、家臣共々の努力も焼け石に水。伝家の宝刀「お断り」で借金帳消しの不名誉を被るしかないのか。人も神様も入り乱れての金策に、果たして大団円なるか―
■感想
ただの足軽の子供であったはずの小四郎が、突然藩の大名とされ莫大な借金を背負わされる。上巻では、大名はまさに企業の社長であり、すべての責任を負う立場であることが伝わってきた。悪い時には悪いことが重なり、金が必要な状況となるのだが…。
下巻では小四郎を助けようとする者たちが多数登場してくる。親世代の借金を背負わされた苦悩を、周りも理解しているのだろう。年貢だけでは到底借金を返すことはできない。倒産することも許されない。まさに八方ふさがりな状況だ。
本作では大名だけでなく、貸す側の商人の状況も描かれている。大名に貸した金を返済してもらえないと、商人自身も年末に払う金がない。結局のところ、どこかにそのツケがくることになる。小さな商人は返済が滞ると、とたんに資金繰りに苦しみ不渡りをだしてしまう。
借金で苦しむのは商人も同じ。もし、大名がひとこと借金を棒引きにする言葉「お断り」を発した瞬間、商人たちはそれに従うしかない。この微妙な関係が本作を面白くしている。当然、大名側も「お断り」をしたいわけではない。
小四郎を助けるのは貧乏神を含めた神たちだ。やはり莫大な借金を返すためには神頼みも必要なのだろう。神の力により、鮭を販売することに成功し、そこである程度の金を得ることができる。ただ、それだけですべての借金が返せてしまっては面白くない。
借金の利子すら返せない額なのだが…。そこから小四郎は商人たちに話をつけ、すばらしい案で皆を納得させている。何代も前からの巨大な借金は、実はその大半は利息だ。仮に利息を除いたとしたらどうなるのか…。
今も昔も経営者は資金繰りに苦しむものだ。
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