わが心のジェニファー 浅田次郎


 2016.5.15      テルマエ・ロマエ的に笑える 【わが心のジェニファー】

                     
わが心のジェニファー [ 浅田次郎 ]
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■ヒトコト感想
アメリカ人の青年ラリーが日本にやってきて様々なカルチャーショックを受ける物語。アメリカ人が見た日本の不思議を作者なりに想像した物語なのだろう。この作者の想像部分がすこぶる面白い。日本に住んでいれば当たり前のことかもしれないが、冷静に考えれば確かに奇妙なこともある。それをラリーの言葉として説得力のある面白物語となっている。

まず食べ物がヘルシーすぎるのと、量が少ないということが常に述べられている。行き過ぎたサービスが逆に相手に不信感を抱かせる場合もある。ウォシュレットやカプセルホテルなども、海外からすると奇異なことなのだろう。日本各地を周り、そこで特殊な経験をするラリー。冷静に考えると、日本人からしても??な部分があるのが面白い。

■ストーリー

日本びいきの恋人、ジェニファーから、結婚を承諾する条件として日本へのひとり旅を命じられたアメリカ人青年のラリー。ニューヨーク育ちの彼は、米海軍大将の祖父に厳しく育てられた。太平洋戦争を闘った祖父の口癖は「日本人は油断のならない奴ら」。日本に着いたとたん、成田空港で温水洗浄便座の洗礼を受け、初めて泊まったカプセルホテルに困惑する。……。

慣れない日本で、独特の行動様式に戸惑いながら旅を続けるラリー。様々な出会いと別れのドラマに遭遇し、成長していく。東京、京都、大阪、九州、そして北海道と旅を続ける中、自分の秘密を知ることとなる……。

■感想
どこか「テルマエ・ロマエ」的な雰囲気はある。日本の銭湯文化に驚くのと同様に、海外の目から見た日本の不思議が面白おかしく描かれている。ラリーの困惑は、日本人からすると普通のことだが、確かによく考えるとおかしいな?ということばかりだ。

ラリーの祖父の口癖が「ジャップみたいなことをするな!」ということで、日本に多少の偏見をもつラリー。ただ、ラリーの驚きは新鮮で面白い。異文化体験記と言えるのだが、そこまで日本のことを知らないのか?と思えなくもない。

日本人の几帳面な性格を表して、定刻からずれることのない新幹線。そして、30秒で乗り降りしなければならないせっかちさ。新幹線から下りるためにデッキであらかじめ並ぶ日本人は、外国人からすると奇異に見えるのだろう。

リムジンバスが渋滞により遅れた場合は、運転手が謝る。日本人からすると普通だが、渋滞は運転手のせいではないとラリーは思う。ウォシュレットやカプセルホテルなど、日本の技術力のすごさや、食べ物の繊細な味についてもラリーはいちいち驚き、そしてたまに文句をたれる。これが最高に面白い。

おもてなしの心の究極がホテルや銀行のサービスマンたちだ。ATMを使うラリーの横でぴったりと操作方法を教える銀行員。英語で事細かにアドバイスを送るが、ラリーからすると、降ろした金を奪い取ろうとしているのでは?と思ってしまう。確かにいきすぎたサービスというのはあるのだろう。

自己責任の世界であるアメリカと、なんでもかんでも公共側でセーフティネットをはろうとする日本の違いも大きいのかもしれない。かなりデフォルメされてはいるが、日本の不思議を面白おかしく描きつつ、最後にホロリとさせてくれるのはさすがだ。

笑えて泣ける良質な物語だ。



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