消滅 恩田陸


 2016.5.24      テロ実行犯候補にとんでもない人物が 【消滅】

                     
消滅 [ 恩田陸 ]
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■ヒトコト感想
空港を舞台にした物語。複数の登場人物視点で、何かが起きていることをにおわす描写が続く。巨大なサイレンが鳴り響き、空港職員たちがあたふたし始める。かと思うと何かが起きていることを察知する人まで。このあたりは作者の「Q&A」に近いかもしれない。海外から日本へ帰ってきた者たちが感じる違和感。そして、入国審査で引っかかり別室へと連れて行かれる者たち。

何かが起きているのはわかるが、何が起きているのかわからない。通信障害がより混乱に拍車をかける。冒頭の奇妙さから、その後のテロ騒ぎまで。序盤の奇妙さと後半の論理的な展開。あまりの変わり身の早さに混乱する可能性がある。自分個人としては、前半の雰囲気のままいってほしかった。

■ストーリー

202X年9月30日の午後。日本の某空港に各国からの便が到着した。超巨大台風の接近のため離着陸は混乱、さらには通信障害が発生。そして入国審査で止められた11人(+1匹)が、「別室」に連行される。この中に、「消滅」というコードネームのテロを起こす人物がいるというのだ。世間から孤絶した空港内で、緊迫の「テロリスト探し」が始まる

■感想
ある日の日本の空港が舞台だ。突如としてサイレンが鳴り響き普通ではない状況となる。空港職員があわただしく動き回り、通信障害が発生する。何が起こっているのか?読者は登場人物たちと同じように事態が把握できないまま、物語を読みすすめることになる。

超巨大台風が接近したためなのか、それとも…。入国審査で止められた複数の人々がひと部屋に集められる。ここまでの不可解な雰囲気は、強烈なインパクトがある。超常現象的な何かを想定していたが、物語は思わぬ方向へと動き出す。

別室での人々の思考が面白い。それぞれが何を考えているのか。早く帰りたいのはみな共通しているとして、その理由は様々だ。そして、物語のもっとも衝撃的なのは、別室に集められた人の中のあるひとりの正体だ。ここに至るまでの奇妙な雰囲気がピークとなり、そのオチは驚きに満ちている。

そこから実は「消滅」というテロの実行犯候補を集めているという流れとなる。そこで、誰がテロリストかという探りが始まる。序盤での不思議な雰囲気から、後半はロジックを積み重ねて誰がテロリストかをあぶりだす展開となっている。

テロの内容とオチへ続くまで。後半はなぜ自分たちがテロリスト候補として集められたのかと、お互いの探り合いがメインとなる。それまでに積み上げてきた伏線を最後にどのように活かすのか。オチがイマイチすっきりしないので、全体として尻すぼみなイメージが残った。

前半の、何が起きているかわからない状態のまますすんだ方が気になる展開かもしれない。衝撃的新事実が明らかになる箇所は、それなりにインパクトがあるのだが、それだけかもしれない。

テロの内容を含めて、後半はインパクトが弱い。



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