砂の狩人 下 大沢在昌


 2016.1.30      ヤクザの子どもたちを殺し続けた真相 【砂の狩人 下】

                     
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■ヒトコト感想
上巻での複雑な組織関係の流れが、本作で明らかとなる。暗殺専門のマニラチームと中国マフィア、そして公安警察に複数のヤクザ。それらが入り混じり、どこにも所属しない西崎がすべてのカギを握ることになる。ヤクザの子供たちを殺し続けた犯人の正体が本作で明らかとなる。なぜ、公安警察の上層部が犯人を逃がそうとするのか。

西崎や佐江が秘密を探るうちに、とんでもない真実にぶち当たることになる。本作の面白さは、それぞれ思惑は違えど、目的は一緒ということでヤクザや警察が協力する場面だ。西崎を触媒として、いつの間にか中国マフィアとマニラチーム、ヤクザ、警察までもが一堂に会する場が作られる。緊張感あふれる展開であることは間違いない。

■ストーリー

新宿に戒厳令。中国人マフィアと暴力団の全面戦争が始まった!殺された組長の子供は喉に携帯電話を押しこまれていた。中国人の仕業だと暴走した暴力団員、血染めの応酬をする中国人マフィア、緊急配備につく機動隊…。ついに警察庁の女性キャリア・時岡は、“狂犬”に禁じ手の拳銃の使用を許可した。

■感想
ヤクザの子供たちを殺したのは中国人かと思われていたが、実は真犯人が存在した。中国人を攻撃し続けたマニラチームは、真犯人を逃がすために暴れまわる。警察はどちらを追うわけでもない。西崎たちだけが中国マフィアとコネがあり、真実をつかむことができる。

非常に複雑で、誰が何の目的でその行動をとっているのかは不明だ。が、裏で大きな力が働いているであろうことは想像がつく。西崎が真実を求めるため、また公安上層部の思惑をぶち壊すためにひたすら身を粉にして動き回る。

強烈なインパクトがあるのは、娘を殺された九州のヤクザ泉田だ。仇を打つためにひたすら執念深く相手を追い詰める。その姿勢は情報を持つ西崎へと向かう。泉田たちが西崎を拷問するシーンは強烈すぎる。すべての鍵を握る西崎が、口を割ってしまうと、うまくいきかけた流れがすべてパーになってしまう。

その状況での西崎の根性はすさまじいの一言しかない。また、追い詰める側の九州ヤクザたちの執念もすさまじい。ラストの戦いを前にして、真犯人を見つけ出したいという強烈な熱量を感じることができる場面だ。

すべての鍵を握る真犯人は、ミステリー的ではない。というのは、意外な人物が犯人というわけではない。ただ、真犯人の異常さというのは伝わってくる。あえてヤクザの子供たちばかりを的にかける理由や、自分は決して表舞台にでることなく、裏ですべてを操作しようとする狡猾な生き方。

命を狙われる危険性は少なく、周りを思い通りに操る。狩人シリーズとして、かなり激しい戦いがくり広げられ、生き残るのはわずかな者たちのみ。シリーズとして続く意味があるのは、結局のところ脇役である佐江がいるということなのだろう。

主役クラスが続くシリーズではなく、佐江が脇役として続く、新宿を舞台にしたシリーズなのだろう。



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