2015.9.1 日常の謎が物語のスパイスとなる 【サンタクロースのせいにしよう】
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■ヒトコト感想
一戸建てをシェアハウスとして使うことになった私。同居人の銀子さんは超がつくお嬢様であり世間知らずだ。家賃はタダだが家事をしなければならない。おいしい条件につられて住んだは良いが、そこでは幽霊が見えたり、ご近所さんとのゴミ出しでトラブルがあったり。果ては銀子の腹違いの兄にあたる人物から日常の謎を問いかけられる。
基本的には日常に巻き起こるちょっとしたミステリアスな状況が描かれている。少しの勘違い、意図しない現象、そして目的を持った行為の隠ぺい。なんでもないことではあるが、気を付けて観察すると、そこには奇妙なおかしさがある。どことなく北村薫の作品に近いような気がした。
■ストーリー
一戸建てを二人でシェア、料理さえ作れば家賃はタダ。そんなおいしい話を見逃す手はない―。というわけで、気はいいけれど変わり者のお嬢様・銀子さんの家に居候することになった私。しかし、引っ越し早々、幽霊は出るわ、ゴミ捨て場の死体騒動に巻き込まれるわ…なぜかトラブルが続発。
■感想
”私”が経験するのは、気にしなければ気にならない日常だ。ただ、同居人の銀子さんが極度に世間知らずなため、銀子さんが疑問に思うことからの流れで私も奇妙な状況に気づいてしまう。冒頭はお婆さんの幽霊騒ぎから始まる。
一戸建てとしては破格な家賃から、何かしらいわくつきの物件ではないかと怪しみだす私。調査していくとまったく別の理由があった。家賃が安いと勘違いしていた理由。幽霊の正体は実は…。少しのオカルト風味により物語を面白くしている。
ご近所さんたちから要注意人物とされるおばさんとゴミだしでトラブルとなる。そこで発生するある事件。うるさいおばさんを懲らしめるために考えられた仕掛けが、偶然の要素から大事になる。ゴミ置き場に死体があったと叫ぶおばさん。
そして、警察沙汰の騒ぎとなる。意図したこととは違う結果となるが、私はある推理を展開する。日常の些細なトラブルが大事に発展することはある。ゴミ出しにうるさいおばさんが、他人のゴミまでチェックし始めたことにより起こった事件だ。
トラブル続出だが、後半は日常のなんてことない出来事の裏には大きな事件が隠されていた的な短編が続く。ちょうど北村薫が描くようななんてことない出来事から始まる。庭のチューリップが根こそぎ盗まれていた。誰が何のためにチューリップと周辺の雑草を含めてすべて盗んでいったのか。
私と、銀子さんとは腹違いの兄が登場し、推理を展開する。チューリップが盗まれたこととまったく関連のない事件へたどり着くのが面白い。この推理展開こそが、日常の謎を解き明かす肝なのだろう。
日常の謎のちょっとした疑問が、物語のスパイスとなる。
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