2017.10.18 おかちを巻き込む強烈な怪異 【三鬼 三島屋変調百物語四之続】
三鬼 三島屋変調百物語四之続 [ 宮部 みゆき ]
評価:3
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■ヒトコト感想
三島屋変調百物語シリーズの第4弾。おかちが話を聞くスタンスは変わらない。何やら不思議な出来事が起こり、読者はおかちと同様にどのようなオチが待っているかが気になってくる。この世の者とは思えない流れとなるオチや、しんみりとしたせつないオチとなる話など多種多様だ。おかちを巻き込んでの怪異もある。
おかち自身が三島屋の座敷で話を聞くことに不満はない。が、他人から見ると、その状況というのは異常なのかもしれない。あの世とこの世を繋ぐ旅籠や、村を生き残らせるために村の者たちがやっていた凶行が、いつの間にか鬼の行為となる。生きるためにやむを得ない事情もあり、しきたりにしばられた状況など、様々だ。
■ストーリー
江戸の洒落者たちに人気の袋物屋、神田の三島屋は“お嬢さん"のおちかが一度に一人の語り手を招き入れての変わり百物語も評判だ。訪れる客は、村でただ一人お化けを見たという百姓の娘に、夏場はそっくり休業する絶品の弁当屋、山陰の小藩の元江戸家老、心の時を十四歳で止めた老婆。
亡者、憑き神、家の守り神、とあの世やあやかしの者を通して、せつない話、こわい話、悲しい話を語りだす。「もう、胸を塞ぐものはない」それぞれの客の身の処し方に感じ入る、聞き手のおちかの身にもやがて心ゆれる出来事が……
■感想
表題作でもある「三鬼」は強烈なインパクトがある。罪人が送り込まれる村。食うだけでやっとの村は、上と下に分かれている。その村では鬼がいると噂され…。無駄飯ぐらいがひとりでもいると、村の存在が立ちいかなくなるような厳しい環境。
それは子供であっても例外ではない。病気や怪我をしても医者がいないため、苦しんで死ぬしかない。鬼の正体を確かめようとした侍が見たものは…。かなり衝撃的なオチだ。俗にいう姥捨て山に近いのかもしれないが、鬼の存在は恐ろしすぎる。
「迷いの旅籠」は、ある空家に死んだ者たちが次々と現れてくる話だ。死んだ者が生き返ったわけではなく、ただそこにたたずんでいるだけ。さらには、死者が現れると、なんらか関係のある者が眠った状態になってしまう。
死者が生き返ったと勘違いする場合や、愛する人の場合は、たとえ話ができなくとも、いつまでもそこにいてほしいと考えてしまう。生きている者の方が重要だとはわかっていても、婚約者を亡くした男は、思いを断ち切ることはできない。非常にせつなくなる話だ。
「おくらさま」は、おかちの前に現れた老婆が、実はこの世に存在していないかも?という疑問から始まる。老婆の家には代々守り神がおり、その守り神(おくらさま)のおかげで家は繁栄している。そして、美しい3姉妹の誰かが次代のおくらさまにならなければならない。
家に代々伝わる言い伝え。今ならば科学的でないと反論できるが、娘をいけにえにして家を守る必要に迫られると…。自分の代で言い伝えを破るわけにはいかないという悲しみのようなものを感じてしまう。
不思議な話のオチが怪異であっても、そこに至るまでのもっていき方が良い。
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