六本木聖者伝説 不死王篇 大沢在昌


 2015.1.28      バブルと不死身の男 【六本木聖者伝説 不死王篇】

                     

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■ヒトコト感想

前作「魔都委員会篇」から引き続き、六本木を舞台にした国際犯罪組織との戦いが描かれている。すでに前作でキャラクター紹介が終わっているので、スピーディーに本編へ入ることができる。そこから新たな強敵が日本にやってくる。典型的な犯罪組織とのドンパチ物といった感じだ。「不死王」や「第四将軍」など大げさな登場人物たちが、謎の「ヒュドラプロジェクト」を実行しようとする。

時代的にネットでのハッキングがまだ目新しい時期だったのだろう。コンピュータオタクがハッキングして情報を収集するのが売りのようだが、今となっては新しくもなんともない。逆に正統派のドンパチ物というのは、久しく感じたことのない雰囲気だ。

■ストーリー

世界中の“おいしい街”にひそかに支配の手をひろげる国際犯罪組織「魔都委員会」。これら『街喰い』の尖兵を陰で操るのは、国家権力の力も及ばないほどの強大な権力を誇示する闇の帝王「第四将軍」。その「第四将軍」が次に東京へ送り込んできたのは「香港黒社会」の中でも手に負えぬ無法者として鳴らす伝説の犯罪者、不死王。

奴ら『街喰い』の餌食にされかかっている六本木を死守するために、橋詰海人ら『守る側』のメンバーは、不死王とその配下の暗殺部隊・小鬼隊を相手に決死の戦いを挑む。

■感想
六本木を守る海人たち。守る側のメンバーは前作から変わっていない。情報収集役としてトップ屋が二人入り、コンピュータオタクが二人増えた程度だ。お決まりどおり、最初は激しい情報戦となる。まず守る側がどんな攻撃を仕掛けられるかを調べる。

前作よりもさらに大物感を出すために、相手の強烈なエピソードがこれでもかと並びたてられる。さらには、敵の戦力には命を失うことを恐れないロボットのような兵士たちまで存在する。相当な規模の戦いを予感させる流れだ。

敵の組織の巨大さをアピールすればするほど、守る側の戦力が乏しいように思えてしまう。元防衛庁の部隊が参加しているとはいえ、戦力不足なのは間違いない。物語はヒュドラプロジェクトがどのようなものかを探る前半と、激しい戦いを繰り広げる後半とに分かれている。

六本木を暴力の街にし、治安を悪くし地価を下げるというヒュドラプロジェクト。それを実現しようとする組織が複数存在し、そこから次々と数珠つなぎに黒幕への道が広がっていく。

本作はシリーズ化されているが、結局のところ不死王との激しい戦いで本作は終了する。多くの仲間の犠牲を伴いなんとか倒した不死王。ただ、大ボスたる第四将軍はその姿すら見せない。となると、続編にて登場するのかと思いきや…。どうやらシリーズは中断中らしい。

ある情報によると、続編は作らないと作者が明言したとも…。バブル時代の六本木を舞台にした戦いの物語は、どうやら中途半端なところで終わりを迎えるのは間違いない。

第四将軍とは何を想定していたのかだけでも知りたい。



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