六本木聖者伝説 魔都委員会編 


 2014.10.18      ハードボイルドとバブル 【六本木聖者伝説 魔都委員会編】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

世界規模の犯罪組織から六本木を守る。雰囲気はやはりバブル全盛の時代で、謎の組織「魔都委員会」が正体不明なところが、作者の作品の「東京騎士倶楽部」に似ている。六本木を経済支配するとともに、暴力と薬による支配ももくろむ。対して六本木を守るのは、古くからそこに住む者たち。普段は普通のおじさんだが、実は格闘技の達人だとか。

六本木は、今の印象だと六本木ヒルズの印象しかない。老舗の店なんてのは、六本木に似合わないような気もするが、バブル期にはまだ存在したのだろう。謎の組織と主人公海人たちの戦いは、激しくもあり、バブル臭がすさまじい。ハードボイルドとバブルは相性が良いのだろう。

■ストーリー

東京・六本木の「佳花飯店」が爆破され、同店の社長・宋海礼と、和菓子屋「はしもと」の三代目・橋詰成人らが会食中に爆死した。それは世界規模の犯罪組織「魔都委員会」が六本木侵攻の第一歩として起こしたものだった。各々の父を失った宋麗豊と橋詰海人の二人は、夫々の父が、同委員会の侵略を阻むべく世界に散っている対抗組織のメンバーと知った…。

■感想
本作品はシリーズのようで、まだ謎の組織の全容が明らかにされることはない。六本木を支配しようとする謎の組織。世界規模で、世界の各地の街を支配してきた組織。イメージはわかないが、組織の巨大さは想像できる。

今回、ターゲットとされたのが六本木で、そこに古くから住み六本木を守ってきた者たちが立ち上がることになる。人知れず街を守っていた者たち。普段は気の良いおじさんが、実は凄腕の格闘家だった、なんてのはありがちだ。本作はまさに、人知れず街を守ってきた者たちの物語だ。

時代はバブル全盛。当然、世界的な組織は資金力もずば抜けているため、出てくる描写はバブリーなものばかり。ハードボイルドの渋さというよりは、渋い男たちが、金に物をいわせて好きなことを好きなようにするという雰囲気だ。

六本木を守る者たちも、六本木のビルのオーナー一族なので、当然金持ちだ。全体的に金はうなるほどある。が、金よりも街を守ることに重点が置かれているため、バブリーな雰囲気を打ち消すような激しい戦いの描写がある。

本作のキャラはどれも薄っぺらく感じてしまうが、佐倉だけはしびれるような魅力がある。魔都委員会に対抗する組織として、正体は明かさないが海人たちと共闘する。佐倉の、目的のためには手段を選ばない強硬な姿勢が良い。海人たちとは、また別のベクトルがあるようで、強烈な魅力がある。

本作では魔都委員会の正体は明らかとはならず、黒幕かと思った人物が、実は操られていただけ、という定番パターンとなっている。この手の作品は、黒幕がどのような人物かによってインパクトは大きく変わってくるだろう。

東京騎士倶楽部」ほどの組織の不可思議さは、まだ見えてこない。



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